「自由の創設」へともがくミャンマー内戦を内側から描いたドキュメンタリー映画 『夜明けへの道』【高間智生氏寄稿】

2024.04.07

4月27日(土) 新宿K's cinema ほか全国順次公開予定

《本記事のポイント》

  • 軍事クーデターから市民革命へ 「自由の創設」へともがくミャンマーの人々
  • 軍としての正統性を喪失したミャンマー国軍
  • 今こそ日本はアジアにおける正義の実現に力を貸すべき

軍事クーデターへの抗議活動により指名手配となった映画監督が、自身の逃亡生活と決意を記録したセルフドキュメンタリー映画。勃発から3年が経つミャンマー内戦が「自由の創設」を求めた革命へと向かいつつあることを示す。

監督・脚本・出演を務めるコ・パウ氏はミャンマーを代表する俳優・映画監督。俳優として400本近くに出演したほか、多くのビデオ映画を監督し、15本の長編映画を制作している。

僻地の小学校に赴任した熱血教師の奮闘をコミカルに描いた「涙は山を流れる」(2019)で同年のミャンマー・アカデミー賞の監督賞に選ばれ、主演俳優のミンミャッ氏はこの映画でアカデミー賞を受賞した。ミャンマーで軍事クーデターが2021年2月1日に勃発すると、仲間の芸能人とともに抗議デモに参加。

2月17日には国軍から追われる身となり、民主派勢力の支配地域に逃亡。潜伏中のジャングルで短編映画「歩まなかった道」(2022)を制作、今回セルフドキュメンタリー映画「夜明けへの道」を制作した。現在も軍への抵抗活動を続けている。

軍事クーデターから市民革命へ
「自由の創設」へともがくミャンマーの人々

コ・パウ氏を始め、映画に登場する一般市民の人々が、クーデターによって失われた「自由の回復」を求めて、自らの命を顧みず、抵抗運動に参加していることがひしひしと伝わってくる。

市民勢力を支援しているとの嫌疑により、集落が丸ごと空爆され、灰塵と帰した家屋跡で座り込み、悲嘆にくれる農婦。まだあどけない顔で、ジャングルの中での軍事教練に明け暮れる学生たち。一様に口にすることは自由の回復への決意だ。

2011年、長きにわたる軍事政権からミャンマーは民主化に大きく舵を切った。その後の10年、市民は自由と民主主義への道を着実に歩み始めていた。

しかし今回のクーデターにより、一夜にして世界は転覆。軍は前年の総選挙での不正を口実に、アウンサンスーチー国家顧問ら民主派政権の幹部を拘束し、非常事態を宣言して全権を掌握した。

反発した市民の抗議デモは武力闘争に発展し、人々の自由と平穏な暮らしは崩れていった。

3年が経った現在でも一部少数民族と連携し、国軍との戦闘が激化している。地元人権団体によるとクーデター後、4500人近い市民が国軍に殺害され、計約2万6000人が拘束。避難民は約230万人にのぼるという。

しかしミャンマーの人々は、一度手にした自由を決して手放さない決意を世界に示しつつある。

大川隆法・幸福の科学総裁は著書『政治の理想について』のなかで「世の中には革命と称するものはたくさんありますが、革命と称して粛清の限りを尽くすようなことが数多くあります。王政に対してであれば、国王一族や前の政府の人たちを、皆殺しにしたり投獄したりするようなことがあります。このようなものは革命ではありません。これは反乱もしくはクーデターのたぐいであり、本当の革命は、その結果として、自由が創設されなければならないのです」と指摘しているが、今のミャンマーの内戦は、革命と呼ぶにふさわしい「自由の創設」へと、もがきつつも進んでいると言えるだろう。

国軍としての正統性を喪失したミャンマー軍

仏教国でありながら、平然と丸腰のデモ隊を銃撃し、市民勢力の支配地域を空爆による無差別殺戮によって恐怖に陥れているミャンマー国軍。その残虐行為は次第にエスカレートしつつある。国家の防衛を担うべき国軍が、このような"恐怖による抑圧"へと暴走する姿をどう捉えるべきだろうか。

軍隊の善悪を判断する基準について、東洋の源流に位置する神で、約3万年前、アンドロメダ銀河から宇宙船で約20万人を率いて富士山の裾野に降臨して「富士王朝」を築き、釈尊やムー大陸の偉大なる指導者ラ・ムーにも影響を与えたとされる天御祖神は、『減量の経済学』(第2章「天御祖神の経済学」)のなかで次のように指摘している。

自国民の生命・安全・財産等を護るという伝統的な警察行動の一環としての軍隊が、その限度を超えていない範囲であれば『善』でしょう。しかし、国民を暴力によって脅迫したり、自由を奪ったり、あるいは国民から財産を収奪したり、あるいは都合の悪い人たちを強制収容所に送ったり抹殺したりするようになれば、一国のなかにおいても、軍隊が『悪』になることはあるでしょう。そうした、人々の多数の感情から、それは導き出されることであると思います。(略)本来あるべきは、『神仏の心』です。そういうものが存在しなければならないと思います

映画ではミャンマー軍の空爆を受け、塹壕で身を伏せて息を殺しながら仏陀に祈りを捧げる小学生たちの痛々しい姿が記録されている。もはやミャンマー軍は国軍としての正統性を喪失したと言わざるを得ない。

今こそ日本はアジアにおける正義の実現に力を貸すべき

日本政府は、ミャンマーでクーデターが発生後、複数回にわたって暴力の即時停止、アウンサンスーチー氏ら拘束者の解放、民主的体制の早期回復を求めている。21年6月には衆参両院でミャンマー・クーデターを非難する決議が可決された。

だが、日本は新規のODA案件を見送る一方で、既存案件については現在もプロジェクトを止めていないとされる。

また本映画の資料によると、日本の防衛省がミャンマー国軍の士官や士官候補生を受け入れ、防衛大学校や自衛隊で軍事訓練を施していることについて、ミャンマー人から「国への支援はやめてほしい」「日本政府は正義の側に立ってほしい」との声が上がっているという。

日本には、アジア諸国を自由と民主主義へと導いていくために、もっと多くのことをするだけの能力も責任もあるはずだ。そのためには、正邪を分かつ「価値観のバックボーン」としての正しい宗教理念が必要であり、神仏から降ろされる宗教的正義に基づいて、アジアの平和と繁栄を実現することに目覚めなければならない。

 

『夜明けへの道』

【公開日】
2024年4月27日(土) 新宿K's cinema ほか全国順次公開予定
【スタッフ】
監督・脚本・撮影 コ・パウ
【配給等】
配給:太秦
【その他】
英題:RAYS OF HOPE | 2023年 |ミャンマー |101分

公式サイト https://yoake-myanmar.com/

【関連書籍】

いずれも 大川隆法著 幸福の科学出版

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タグ: ミャンマー  高間智生  夜明けへの道  コ・パウ  デモ  軍事クーデター  民主派  宗教  国軍  革命  自衛隊 

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