米下院でスピード可決されたTikTok禁止法案に「検閲と統制」疑惑 容赦のないトランプ氏への司法攻撃が続く【─The Liberty─ワシントン・レポート】

2024.04.01

3月12日までの予備選・党員集会で、民主党のバイデン大統領も、共和党のトランプ前大統領も、それぞれの党の指名獲得に必要な代議員の過半数を確保し、両党による大統領候補者指名が確定した。

通常の大統領選の年であれば、夏前までは、野党側(共和党)の指名争いの話題で溢れているはずだが、トランプ氏が歴史的な支持率の高さで、早くも共和党の指名を確実にしたため、両党が正式に党指名候補を発表する夏の党全国大会までの話題が少なくなった印象がある。

トランプ氏がここまでの圧倒的な党内支持率を獲得した背景には、昨年3月以降のトランプ氏への連続した起訴(4件)と民事訴訟(2件)などがある。どの訴訟も、トランプ再選阻止という政治的動機に基づいて、通常使われない方法で法律を駆使するなど、無理やり罪状を捻出していることは明らかで、アンチトランプの左翼系メディアすら「異常」などと言い、共和党内では怒りと共に、トランプ氏への応援が集中した。

下院でスピード可決されたTikTok禁止法案の危険性

中国IT大手「北京字節跳動科技(バイトダンス)」が傘下の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を所有していることで、TikTokユーザーの個人情報が中国当局に筒抜けになっている、世論誘導やプロパガンダ拡散が可能になっているなどの懸念が強まっている。

こうした国家安全保障上の懸念に対処するため、バイトダンスがアメリカ国内でのTikTokの事業を6カ月以内に売却しなければ、全米でのアプリ配信を禁じることを定めた「外国の敵対者がコントロールするアプリからアメリカ人を保護する法案」(通称TikTok禁止法案)が3月5日に下院エネルギー・商業委員会(共和党主導)に提出され、わずか2日で、全会一致で可決。13日には下院本会議(共和党優勢)で、賛成352、反対65の大差で可決されたことが、大きな話題となった。

同法案は、TikTokをはじめ、ロシアやイランなどの「外国の敵対者」が所有するアプリやウェブサイトのアメリカ国内での配信を禁止するもの。ただし、アプリの管理権が「外国の敵対者」以外の企業に売却されれば、サービスは続行できるとしている。

バイデン大統領は、同法案が上院も通過した場合は、成立に必要な署名をすると発表している。

トランプ氏は11日のCNBCのインタビューに対し、「TikTokは国家安全保障上の懸念である」としつつも、「TikTokがなくなったら気が変になる子供が大勢いる」と述べ、同法案に懸念を示した。また「TikTokを禁止すれば、特に、フェイスブックは大きな利益を得ることになるだろう。私は、フェイスブックは我が国にとっては非常に有害だと思う、特に選挙に関しては」などと語った。

SNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿でも、「もしTikTokが取り除かれれば、フェイスブックとザッカーバーグはビジネス規模を2倍にする。前回の選挙で不正行為を行ったフェイスブックが発展することは望ましくない。彼らは真の国民の敵だ!」と述べていた(8日付)。2021年1月の議事堂襲撃事件を煽ったとして、トランプ氏のフェイスブックアカウントは2023年2月まで凍結されていたことが背景にある。

複雑な要素が絡んでいるため、法案についての判断は簡単ではない。米ワシントン・ポスト紙は「TikTokの投資家で共和党の巨額寄付者であるジェフ・ヤス氏との関係修復のため、トランプ氏はTikTok擁護にシフトしたのではないか」(3月12日付)と指摘する一方で、後日に「TikTok禁止法案は、TikTokだけに関するものではない」と題して、法案の潜在的な危険性についても論じている(3月27日付)。法案の中身を見る限り、トランプ氏の意見は、結論的には正しいのではないか。

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