インドの独自外交を支えるインテリジェンス ──アメリカとの難しい付き合いにどう向き合ってきたか──
2023.10.29
2023年12月号記事
インドの独自外交を支えるインテリジェンス
──アメリカとの難しい付き合いにどう向き合ってきたか──
ウクライナ戦争の勃発と共にインドの独自外交が世界の耳目を引き、同時にその背景にいるインドの諜報機関RAWが、にわかに注目を集めている。
取材を通して、インドの独自外交を支えるインテリジェンスに迫った。
国際政治学者
ブラーマ・チェラニー
(Brahma Chellaney) インドにおける戦略研究・分析の第一人者。印シンクタンク「政策研究センター」で名誉教授を務める。インド外相が主導した政策諮問委員会のメンバーや国家安全保障会議の一員も務めた。米誌ニューズ・ウィークなど寄稿多数。
国際情勢が混乱を極める中、各国の情報機関に改めて注目が集まっている。インドの対外情報機関・RAW(Research and Analysis Wing)もその一つだ(*1)。
インドから分離した独立国家の樹立を目指していたカナダ国籍のシーク教指導者が今年6月、カナダ国内で殺害された事件をめぐって、カナダのトルドー政権はインド政府の関与を主張。主権侵害だとし、RAWの支局長とされるインド外交官をカナダから追放する事態に発展した。トルドー政権の主張はファイブ・アイズ(*2)の情報が根拠になっているとされるが、インドとの関係悪化を懸念する米政府は慎重な姿勢を見せている。
(*1)日本語の定訳はないが、「研究分析局」や「調査分析局」と訳される。
(*2)アングロサクソン系の英語圏5カ国(米英豪、カナダ、ニュージーランド)による機密情報共有の枠組み。
次ページからのポイント
情報戦の重要性を浮き彫りにした軍事的敗北の経験
米外交の功罪と各地での工作活動
米政府、パキスタンの親露首相を"排除"
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