釈量子の志士奮迅 [第127回] - 今求められる「妖怪性」の反省

2023.08.29

2023年10月号記事

幸福実現党 党首

釈量子の志士奮迅

第127回

幸福実現党 党首

釈 量子

(しゃく・りょうこ) 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から現職。
釈量子のブログはこちらでご覧になれます。
https://shaku-ryoko.net/

今求められる「妖怪性」の反省

1941年12月8日の真珠湾攻撃から始まった日米戦争は、東京大空襲や人類史上初となる原爆投下など、日本に凄惨な傷跡を残しました。戦後70年以上が経ちながら、今なお主権国家としてままならない日本を憂う切実な声に対し、幸福実現党は「GHQによる占領政策」や「自虐史観に基づいた教育」の問題を取り上げてきました。

しかし本当にこの国を変えるには、歴史認識の奥にある「日本神道の問題」を直視しなければならないと痛感しています。

大川隆法・幸福実現党総裁は昨年から、『地獄の法』や『妖怪にならないための言葉』などを矢継ぎ早に刊行され、日本人の心に潜む「妖怪性」を指摘されました。例えば「妖怪の現代的特徴を指摘すると、『ゴマカシ』にある。」ことや、「『勢い』が好きで、堅実な仕事、手堅い仕事、末長い成功を収めるのは苦手である。短期で成果を出して、賞賛を得るのが大好きである。」、「自分の失敗を指摘されると、記憶が遠くへ飛んで、自分への褒め言葉は、過大に、岩に刻み込む。」などの傾向性を指摘されています(*1)。

(*1)大川隆法著『妖怪にならないための言葉』(幸福の科学出版)

合理性に欠け兵站や継戦能力を無視した日本

敗戦は、こうした日本人の思想的限界を浮き彫りにしました。

日本の参戦で、欧米列強の植民地が解放されたのは事実です。しかし兵站や継戦能力を軽視する軍事思想の未熟さ、局地戦での勝利など"勢い"を重視する戦略性の欠如、大本営発表で失敗を直視しない合理性のなさなどは、大きな反省点と言えます。

例えば真珠湾攻撃では、攻撃地点の近くにあった石油タンクを一切攻撃しませんでした。タンクを攻撃していれば、米海軍は半年は動けなかったと言われています。石油タンク・工廠を叩くべきと強硬に具申した司令官もいたものの、"空気"の中で退けられてしまったのです。

またマリアナ沖海戦においては、全ての島を守ろうとして各島に一万人から二万人ほどの兵隊を分散させて配置しました。

一方アメリカは、「サイパンを落とせば東京に空襲ができ勝利できる」と考え、要となる島に戦力を集中。戦力を分散させた日本の弱点は兵站にあると見て、輸送船を沈め食料や武器等の補給を断ちました。一連の合理的戦略や工業力に象徴される継戦能力により、アメリカは零戦など日本の戦闘機に苦戦していた形勢を逆転させます。大川総裁はアメリカの強さをこう指摘されています(*2)。

『戦いを続けていく能力』『再び立ち上がる能力』『改善してイノベーションをかけていく能力』が優れていると思います。『自分のほうが弱い』と見たら、何が弱いのかを研究して、そこを乗り越えていこうとする力が非常に強かったのです

残念なことに、日本の兵站軽視は今も変わっていません。

化石燃料の大半を輸入に依存している日本は、シーレーンが封鎖されれば"終わり"です。この問題は長らく指摘されてきましたが、今に至るまで十分な手が打たれていません。特に昨今、ウクライナ戦争や脱炭素政策の影響もありエネルギー価格は高騰し続けています。原発再稼働が急務であることは自明ですが、政治家は一時的な補助金制度でごまかしているのが現状です。

(*2)法話「先見力の磨き方」

西太平洋ソロモン諸島のガダルカナル島沖で撃沈された輸送船「鬼怒川丸」。ガダルカナル島を巡って繰り広げられた戦いでは、日本の継戦能力が限界に達し、戦死者だけでなく飢えと病で多数の犠牲者が出た上、軍艦や航空機、武器なども数多く喪失した。

仏教を追い出した日本政治の限界

エネルギーに限らず、自分の国を自分で守れない国防体制や、長らく低迷が続く経済も、同様の問題を抱えています。責任の所在がはっきりしないまま、その場の空気で物事が決まってきました。LGBT理解増進法も反対しにくい空気の中で可決され、肝心の価値判断について議論された様子はありません。

こうした「無責任体制」と「空気の支配」について、大川総裁は「妖怪の発生源と国民性の両方をつなぐものではないか」と指摘されています(*3)。

なぜこうなってしまったのか──。決定的な要因が、日本から仏教を追い出したことです。

現代まで伝わる日本神道には教えがなく、善悪を分かつ価値観がありません。日本においてそれを教えてきたのが仏教でした。「縁起の理法」や「地獄の裁き」は、誰一人として自己責任の原則からは逃れられないことを教えます。特に明治新政府下で起きた廃仏毀釈以降、「がらんどう」で「中身がない」という弱点が顕著に現れてしまったと言えるでしょう(*4)。

真に日本を立て直すには「妖怪性の反省」が不可欠です。

(*3)法話「『妖怪にならないための言葉』発刊記念対談」
(*4)日本神道の問題点については、『奇跡の法』第2章や『常勝の法』第5章、『救世の法』第4章、『人として賢く生きる』第1章などに詳述(いずれも大川隆法著、幸福の科学出版)。


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