「分配」と「課税」では、中間層などつくれない 規制だらけで「新自由主義」が行われたことがない日本【山田順氏インタビュー前編】
2021.12.10
発売中のザ・リバティ1月号「自由民主党は社会分配党なのか」では、「分配と課税」を掲げる自由民主党の政策が実は社会主義政策であり、「共産党宣言」と見まがう内容であること、同じくバラマキと増税を訴える野党の政策は「問題外」と指摘し、警鐘を鳴らしました。
本欄では、増税路線に釘を刺すジャーナリストのインタビュー(前編)を紹介します。
野党対策でしかない自民党の政策
山田 順
1952年、神奈川県横浜市生まれ。立教大学文学部を卒業後、光文社に入社。「光文社ペーパーバックス」を創刊し、編集長を歴任。著書に『隠れ増税』(青春出版社)、『コロナ敗戦後の世界』(エムディエヌコーポレーション)など。
──10月の衆院選では、ほとんどの政党から、バラマキ政策ばかり出ていました。
自民党にしても野党にしても、公明党にしても、全部発想が同じです。つまり、困っている人は給付金を出して助ければいいと。そういう発想であること自体が資本主義を否定していて、はっきり言って間違っています。この政策を「マルクス主義経済学」と言って提出すればいいのではないでしょうか。
岸田文雄首相は、「新しい資本主義」というものを言っています。委員会をつくって、いろいろな意見を出してください、と言っているけれども、それが何だか分からない。結局今までと同じように続けていくというだけの話で、何かがものすごく変わるわけではないので、新しいものは何もないです。
そもそもどうして自民党がこうなったかと言えば、野党が皆「お金を配る」と言い出したわけです。特に公明党は「18歳以下に10万円配る」とか、それから、れいわ新選組も「20万円配る」「消費税をなくす」とか、とにかく皆、「給付金をバンバン出します」と、それをあたかも政策みたいに言っていて、バラマキ合戦になったわけです。
そして自民党も「いくらか配らないと」という発想になった。本来、もっと責任ある政治をやらなければならないのですが、バラマキになってしまった、という悲しい現実があります。
新自由主義など、まだ行われていない
その次に、認識の前提となる考え方が完全に間違っています。岸田さんにしても、何にしても、皆が間違っているのは、「アベノミクスというのは新自由主義」で、「自由な経済をやってきたから、格差が広がった」という言い方をしているところです。
こんなことを言う人は、経済のことを全く知らないか、それとも、わざと言っている以外に考えられません。なぜならこれまでずっと、日本の歴代政権は皆、「新自由主義」などやってこなかったからです。
新自由主義の根本というのは、要するに、「小さな政府をつくる」という考え方なので、税金はなるべく上げないようにしましょうということです。国は口出ししないで、皆が自由に経済活動をして、豊かになれるようにしようということですが、今までそんなことをやった人は一人もいないです。アメリカと違って、日本には本当の自由競争などありませんし、規制だらけで、弱肉強食でもないのです。
今までやってきた日本の資本主義は、むしろアメリカとは全く違って、中国に近い「縁故資本主義」と言った方がいいと思います。要するに、皆で縁を手繰りながら、「この財閥とか、この大企業に関しては、消費税の戻しを当てる」など、グルになってやっている資本主義に見えてなりません。
賃金を上げても失業者が増える
それから、自民党もどの党も、「最低賃金を上げる」と同じことを言っています。自民党は、アベノミクスの時もそうでしたけれども、経団連に掛け合って、2~3%くらい無理やり賃上げさせようとしているわけです。
しかし、それをやると、失業者がどんどん増えてしまいます。給料として出せる額は一定なので、企業はクビを切る。人数を減らすしかなくなって、もっと不況になります。皆、中学、高校、大学で、ビジネスや経済を学んだ方がいいと思います。それも、「経済学」ではなくて、このように、実社会で経済がどのようになっているのかを日本人が学ばないと、立ち直っていかないと思います。
中間層は分配ではなく「仕事を続けること」で生まれる
岸田首相は、「バラマキ」などという汚い言葉ではなくて、ソフトに「分配」と言っていました。つまり、持っている者から富を取って、貧しい人たちに配ります、と言いました。
しかしこれは、中国の習近平・国家主席と言ったことと同じですよ。習氏が8月に言ったことは、「共同富裕、皆で豊かになりましょう」ということです。この裏の意味は、「金持ちの金を取り上げるよ」ということです。そうでないと、貧しい人を豊かにできないという考えです。社会主義や共産主義はそういう考え方でしょう。
だけど資本主義であれば、そんなことをやってはいけません。勝ち抜いた人が豊かになる、という競争を否定することになってしまいます。ある程度、分配はしなければいけないのだろうけれども、それは本当に困った人たちを助けるためであって、分厚い中間層をつくるのに分配をするというのはあり得ません。
分配というのは、毎月給料をくれるわけではなくて、一回きりだから、それで終わりになってしまいます。本当の福祉というのは、仕事をあげることではないですか。それから、投資チャンスを与えるとか、自由な競争の中でスタートアップできるようにするとか、そういうことが資本主義の発想です。
「誰かから取り上げたから、あなたに配ります」と言われても、それは共産主義ですから。「全員同じ暮らしをしろ」「私有財産を認めません」ということになる。そんな政策はあり得ないです。
コロナ禍の緊急事態宣言で、飲み屋さんなどがとても困りました。お酒も出せなくなってどうしようもない、お手上げです、だからお金を配ります、ということになりましたが、それが正しいことのようになっています。
でも本当は、「SDGs(持続可能な開発目標)」という言葉が流行っているように、本当はその商売を持続させてあげないといけません。「それにはお金が必要だから、仕方がないから配る」と言っているのだけども、「配ればいい」というのは間違いです。
共産党が一番いいですよ。「共産主義に変える」と言っているのだからはっきりしていて、ぶれてない(笑)。
特に自民党を批判する、というわけではありませんが、今の政策は「自由」「民主」ではないと思います。(続く)
【関連書籍】
『ザ・リバティ』2022年1月号
幸福の科学出版
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2018年4月号 経営者100人が語る「重税ニッポン」 - アメリカでは中小企業に大減税……
https://the-liberty.com/article/14156/
2021年11月27日付本欄 未来はまだ変えられる~いま知るべき中国の本性と危険性~「ザ・リバティ」1月号(11月30日発売)
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