「Zoomにアカウントを凍結」された天安門事件・元学生リーダー語る事件の真相(後編)
2020.07.09
オンライン会議「Zoom(ズーム)」の運営会社が6月中旬、天安門事件に関する会議を開催した在米活動家のアカウントを一時停止していたことが明らかになった。ズーム社が「中国政府の要請」によってアカウントを停止したことを発表し、その対応に批判の声が高まっている。
同会議を開催した人権擁護団体「人道中国」のトップで、天安門事件の元学生リーダーでもある周鋒鎖氏に話を聞いた。今回は、その後編となる。
(聞き手:国際政治局 小林真由美)
「人道中国」主席
周鋒鎖
プロフィール
(しゅう・ほうさ/Zhou Fengsuo)1967年、中国の西安市生まれ。北京にある清華大学在学中、天安門広場での民主化運動で学生リーダーとして活動。95年にアメリカに亡命し、シカゴ大で修士号(MBA)を取得。卒業後から2017年まで金融業界で働いた。2007年に人権団体「人道中国」を設立。
──前編では、「今の香港は31年前の天安門事件の時と同じような状況」とおっしゃっていました。
周: 香港の民主活動家の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏や周庭(アグネス・チョウ)氏は、7月1日の香港国家安全維持法の施行を受け、自ら創設に関わった政治団体「香港衆志(デモシスト)」を離れると発表しました。
私も1989年4月26日に、中国共産党の機関紙「人民日報」に掲載された社説を受けて、学生団体を解散させたことがあります。この社説はトウ小平の談話をもとに、天安門広場での学生デモを「動乱」と決定付けたものです。メンバーが逮捕されたり武力弾圧を受けたりする恐れがあったため、一旦解散せざるをえませんでした。
信仰との出会いで救われた
──香港のデモ隊は、キリスト教の聖歌を歌って行進していました。周さんも、天安門事件後、アメリカでキリスト教徒になったそうですね。
周: 天安門事件の後、私の心には中国政府への憎しみしかありませんでした。しかしアメリカに亡命した後の2003年に、キリスト教に出会い、傷ついた心が癒されていくのを感じました。
中国にいた時も、台湾に住んでいた親戚から聖書をもらったことはありましたが、当時はよく理解できませんでした。天安門事件を経てはじめて、神様がいつも自分のそばにいたことに気付きました。神様は他の苦しんでいる人たちにも寄り添われています。自分もそうした人たちに寄り添える生き方をしたいと思い、人権団体の「人道中国」を設立しました。
私たちの団体は、政治的信条が理由で、中国で弾圧を受けている人々と、その家族をアメリカに呼び寄せ、ここでの生活をスタートする支援を行っています。天安門事件の時に戦車にひかれて両足を失った民主活動家の方政氏もその一人です。
中国共産党は、人々のつながりを断絶し、お互いの信頼を失わせ、道徳心を破壊します。しかし私は、教会に集まる人たちや他の活動家との交流を通して、再び人を信じ、人生に希望を持つことができました。これこそ、中国共産党が宗教を恐れる理由だと思います。
中国国内には、政府を批判した学者や人権派弁護士、地下教会の牧師など、正しい行動をしたがゆえに、弾圧を受けている人が数多くいます。彼らの権利を守り、経済的に支援し、声を代弁することが、今の自分の責任だと思っています。
国際社会が連携し中国を囲い込むべき
──中国の民主化運動を成功させるためには、何が必要ですか。
周: 国際社会が一丸となって、中国共産党を批判することが大切です。コロナウィルスの世界大流行も、中国政府による情報隠蔽が原因でした。もはや中国一国の問題ではなく、世界全体の問題です。習近平国家主席はヒトラーのような存在であり、今の中国はナチス・ドイツのようなものだからです。
中国の覇権主義は、世界各国が大切にしている普遍的な価値と必ず衝突します。このままでは戦争にも発展するでしょう。
トランプ米大統領は、アメリカの大統領としてはじめて、正しい方向に進もうとしています。しかし中国の人権問題の改善と、「グレート・ファイアウォール(情報検閲システム)」を破るという点で、アメリカはもっと多くのことができるはずです。各国が連携して全方位から囲い込み、中国共産党という最悪の独裁政権をなるべく早く転覆させなければいけません。
日米で世界平和の実現を
──日本政府に期待していることについて、コメントをいただけますか。
周: 日本のこれまでの対中政策は間違ってきたと思います。天安門事件の後、世界中が中国に対して制裁を加える中、日本は天皇を訪中させ、中国の国際的な孤立に風穴を開けてしまいました。その後、中国を経済的に援助し続け、今のような"経済大国"に育てました。
そして今年も、世界中がコロナ・パンデミックに苦しんでいる中、習近平氏を国賓として日本に招く計画を持ち上げるなど、同じ過ちを犯そうとしていました。
日本が本当の意味で国益を大事にするのであれば、中国の民主化のためにできることをすべてすべきです。日本は民主化した隣国から、より多くの恩恵を得られるからです。台湾や香港への支援ももちろん大切です。また、北朝鮮は中国の操り人形にすぎないので、北朝鮮のミサイル問題も、中国が民主化すれば解決していきます。
日本はアメリカにとって、アジアで最も重要な同盟国です。アメリカが対中政策で正しい方向に進んでいる今、日本も同じ方向に進むべきです。中国民主化は世界の平和のために必要であり、この実現に向けて日本とアメリカが貢献することを期待しています。(了)
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