自衛隊初の宇宙部隊を2020年に創設 宇宙を舞台にした国防のあるべき姿は
2019.08.06
《本記事のポイント》
- 自衛隊初の宇宙部隊が2020年度に創設される
- 中露が開発する衛星攻撃衛星などの兵器が使われれば地上はパニックに
- 日本も独自に宇宙空間の防衛開発を行うべき
政府が自衛隊初の宇宙部隊を2020年度に創設する方向で最終調整に入ったことを、5日付読売新聞が一面で報じた。
敵国の人工衛星への攻撃や妨害が可能な衛星攻撃衛星(キラー衛星)など兵器の開発を進める中国とロシアに対抗し、トランプ米大統領も昨年6月、2020年中に宇宙軍を創設すると発表している。
日本もようやく宇宙を舞台にした防衛計画に本格的に着手する段階に来た。
本欄では、約1年前に紹介した、アメリカと中国による宇宙戦争についてや、日本が取り組むべき宇宙防衛に関する、元航空自衛官のインタビューを紹介する。(2018年10月号記事の再掲。記事の内容は当時のもの)。
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Interview
日本は独自に宇宙空間の防衛を
元航空自衛官
河田成治
(かわだ・せいじ)1967年、岐阜県生まれ。防衛大学校を卒業後、航空自衛隊にパイロットとして従事。現在は、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)の未来創造学部で、国際政治学や安全保障を教えている。
なぜ米中が競って「宇宙軍」を整備しているかというと、現代の戦争は、人工衛星などの宇宙技術がなければ成立しないからです。
例えば、アメリカの一つの空母打撃群が展開する広さは、九州や四国ぐらい。広大な海洋でお互いの位置関係を把握し、連携しながら戦うためには、GPSなどの衛星技術を使った通信システムが必要不可欠です。
ハイテク兵器は米軍の最大の強みですが、宇宙関連の技術に依存しているという点で、最大の弱みでもあります。
中国は、「宇宙を制したものが軍事的覇権を制する」という考えのもと、宇宙強国を目指し、空軍と宇宙軍を一体化して強化する戦略を打ち出しています。
そんな中国が持つ核心的技術の一つに、地上からのレーザー砲で人工衛星を破壊する、もしくは機能を停止させられるレーザー兵器があります。こうした技術は、実はアメリカよりも中国の方が進んでいる可能性があるのです。
日本の「失われた40年」
米中が宇宙開発競争でしのぎを削っている一方で、日本はだいぶ後れを取っています。
その背景には、1967年に宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する「宇宙条約」が結ばれた際に、「核などの大量破壊兵器を軌道上に持ち込まない」ことなどが確認され、宇宙平和利用の原則が定められたことがあります。日本の国会は、この「宇宙の平和利用」を「宇宙は非軍事」と解釈し、宇宙開発を自主規制してきたのです。
2008年からその方針を初めて転換し、宇宙基本法と宇宙基本計画をつくり、「安全保障のためにも利用できる」としました。専門家は、非軍事に限定して宇宙開発をしてきたこの期間を、「失われた40年」と呼んでいます。
宇宙空間は日米安保の適用外
宇宙に限らず、日本人は、漠然と、「いざとなったらアメリカが守ってくれるだろう」と思っているところがあります。
しかし、日米安全保障条約はあくまでも「日本の領域への攻撃」に日米が共同で対処するものであり、公海上や宇宙空間は基本的に対象外。日本の衛星などには適用されない可能性が高いです。
自衛隊が遠距離の尖閣諸島などを防衛する際には、通信衛星などが不可欠ですが、宇宙防衛において米軍の助けはあまり期待できないので、日本は独自に防衛する体制を固める必要があるということです。
そのためには、今年策定される新防衛大綱の中で、「宇宙防衛戦略」を明確に打ち出すとともに、防衛費を引き上げて、宇宙開発を積極的に進める必要があります。(談)
【関連記事】
2018年10月号 宇宙空間が米中の主戦場 - 米中冷戦5つの戦場 - 貿易戦争から宇宙戦争へ Part.2
https://the-liberty.com/article/14812/
2019年7月18日付本欄 憲法改正の前提で議論すべき安全保障 自民党の安保政策では日本は守れない
https://the-liberty.com/article/16033/
2018年12月21日付本欄 アメリカの「宇宙軍」の裏ミッションとは? 背景にある米中の「宇宙人」事情
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