能登半島沖「大和堆」に北朝鮮の船の大群 「状況は尖閣と同じ」と地元関係者
2017.11.14
《本記事のポイント》
- 北朝鮮籍と見られる船が能登半島沖で違法操業を繰り返す
- 石川県の漁協関係者は「漁ができない」「尖閣諸島と同じ」と憤っている
- 日本側の取り締まる能力の強化のほか、国防体制の見直しが求められている
能登半島沖の漁場である「大和堆(やまとたい)」に近年、北朝鮮の船の大群が押し寄せている。11月に入り、200隻ほどの北朝鮮籍と見られる木造船が現れ、地元の漁業関係者は危機感を募らせている。
大和堆は日本の排他的経済水域(EEZ)内にある漁場だ。日本海側の漁港から例年、イカ漁やカニ漁のために船団が漁に出ている。
しかし、昨年10月以降、北朝鮮の木造船が数百隻現れ、違法操業を始めている。日本のイカ釣り漁船は、光を点灯させてイカをおびき寄せ、釣り針で釣り上げている。しかし、北朝鮮の漁船は日本の漁船に寄ってきて、網でごっそり漁獲する。日本漁船のスクリューに北朝鮮の網が巻き込まれるなどの被害も出ている。
今年夏にも、北朝鮮籍の船が現れ、日本の漁船は撤退を余儀なくされた。海上保安庁が出動し、8月にはいったん、北朝鮮の船はいなくなったが、その後も出没を繰り返し、11月に入り、日本の漁船が大和堆に近づけない状況となった。
大和堆での漁獲量が、冬場の水揚げ量の半分近くを占める石川県の小木漁港は、重大な被害を受けている。石川県漁業協同組合小木支所の総務部長、神谷洋次郎氏は本誌取材に対してこう語る。
「1週間ほど前に小木漁港の漁船が大和堆に向かったところ、北朝鮮の船がびっしりいました。不幸なことにならないよう、操業は諦めて、北海道の方で漁をしている状況です。ただ、北の海はしけたりして、操業効率も低い。波の穏やかなところ(大和堆)で操業したいのが実情です」
日本三大朝市の一つ、輪島市朝市にも影響が及んでいる。同朝市組合の組合長である小林政則氏は、「朝市にとっても死活問題」としてこう憤る。
「主力商品のスルメイカが獲れないとなると、朝市の賑わいが弱ります。松前漬けのためのスルメも足りなくなり、価格がすごく高くなってしまう。国会議員には、プロジェクトを組んで対応してもらいたい。トランプ大統領が来日しましたが、ヘリコプターであの船団を見てもらいたかったですね」
海上保安庁にできるのは「放水」
外国漁船が不法に押し寄せ、安心して漁ができない――。大和堆の状況について、前出の神谷氏は「尖閣と同じ」と危機感を募らせ、今後も国に対応を求めるという。
尖閣諸島付近でも、漁港など地元の関係者は、何度も政府に対応を要望している。同諸島では、警戒中の海上保安庁の船が、中国漁船に体当たりされる事件が発生。近年は、中国漁船や中国海警局の船が接続水域や領海に侵入するケースが急増しており、地元漁師がまともに漁に出られる状況ではない。
これまで海上保安庁の巡視船は不審船に対し、電子掲示板での警告や、悪質な場合は放水を行うなどして、EEZ外に退避させてきた。しかし今年7月、水産庁の漁業取締船が北朝鮮籍と見られる船から銃口を向けられた。取り締まる側の日本の公船にも、正当防衛や緊急避難、公務執行妨害の実力担保のため、可能な限りの「重装備」が必要だろう。
大和堆の付近には5月29日、北朝鮮が発射したミサイルも落下した。政府の対応が後手に回る間に、最前線にいる国民が危険にさらされている。日本の安全保障体制を見直す必要性が高まっている。
(河本晴恵)
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