大物プロデューサーが性暴行疑惑 ハリウッドは業界の闇を無視し続けるか

2017.10.23

2016年9月、米歌手のアッシャーさんがハリウッド伝道入りした際に、ゲストスピーチをしたワインスタイン氏(左)。(Shutterstock.com)

《本記事のポイント》

  • ハリウッドの大物プロデューサー、ハービー・ワインスタイン氏に性暴行疑惑
  • ハービー氏は熱心な民主党支持者で、オバマ氏やクリントン氏に多額の寄付をしていた
  • ハービー氏の行動は以前から周知されており、業界全体が根深い問題を抱えている

ハリウッドの大物プロデューサーであるハービー・ワインスタイン氏のセクハラが告発され、米メディアで大きく報じられている。

ワインスタイン氏は、「恋に落ちたシェイクスピア」、「英国王のスピーチ」、「アーティスト」など、これまで多数のアカデミー賞受賞作品を世に送り出した名プロデューサーであり、ハリウッドの重鎮だ。

米ニューヨーク・タイムズ紙は、同氏が数多くの女優やモデル、スタッフに対してセクハラを加えていたと報じている。この報道をきっかけに、女優のグウィネス・パルトロウ氏やアンジョリーナ・ジョリー氏、ロザンナ・アークエット氏なども被害を受けていたことを明かした。

これらの告発に加えて、セクハラのみならず、性行為やそれに準じる行為を強要されたという声もあがっており、事態は「セクハラ疑惑」から「性暴行疑惑」にまで発展している。

オバマ・クリントン氏にも批判が飛び火

今回の疑惑がアメリカで大騒動になっているのは、「女性の権利を重視するハリウッドが、女性の味方である民主党を支持する」という構図が崩れつつあるからだ。

ワインスタイン氏は熱心な民主党支持者としても知られ、バラク・オバマ前大統領やヒラリー・クリントン元国務長官に多額の献金をしており、クリントン氏に対しては、資金集めのパーティーも開催していた。

セクハラ疑惑が明らかになった後、同氏から献金を受けていた民主党議員は次々とそれを寄付に充てるという声明を出したが、オバマ氏とクリントン氏は声明を出すのが遅くなった。これに対して、批判が集まっている。

特に5日間も沈黙していたクリントン氏は「女性の味方」としての立場を主張し続けてきた。それだけに、「失望した」という声は大きい。実際にクリントン氏は、ドナルド・トランプ大統領がテレビ番組の収録後、バス移動の最中にした会話が公開された際には、その内容が卑猥だったとして、「おぞましい。この男に大統領を任せるわけにはいきません」と強く批判している。

10日の声明では、「ショックを受け、愕然としています。女性たちによって明らかにされた行動は許容されるものではありません。彼女たちの勇気、そして彼女たちへのサポートがこうした行動を止めるのにカギとなります」と述べるにとどまったが、クリントン氏は以前からワインスタイン氏と親密にしており、「本当は知っていたのでは」と勘繰られてもおかしくない状況だ。

ワインスタイン事件は氷山の一角?

ワインスタイン氏の行動は関係者の中で"公然の秘密"だったという。

ハリウッド関係者やワインスタイン氏の同僚は、同氏の行動を周知していたという。それにもかかわらず、これまで30年近くワインスタイン氏のセクハラが黙認されてきたのは、その絶対的な地位による。

被害を受けていたある女性は、「私は生計を立て、キャリアを築こうとしている28歳の女性。ワインスタインは64歳で世界的に有名な男性であり、ここは彼の会社。力関係は、私がゼロで彼が10よ」と述べる。

実際、ハリウッドでの性差別や未成年者への性的虐待は以前から問題視されており( http://the-liberty.com/article.php?item_id=13246 )、今回の事件も「ハービー・ワインスタインはハリウッドの巨大な氷山の一角にすぎない」などと表現されている(6日付米ニュースサイトVOX)。

業界全体にメスを入れる必要があるようだ。

ハリウッドスターの多くが、女性や子供、同性愛者や移民の権利を強く主張し、トランプ氏の発言や政策を女性軽視や人種差別だと批判している。しかし、もしそれが業界内の闇を無視しながらの発信であるならば、「偽善的」だと言われても仕方ないだろう。業界関係者の今後の動向に注目が集まる。

(片岡眞有子)

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タグ: 民主党  プロデューサー  ハリウッド  女性軽視  性暴行  人種差別 

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