首都圏の自治体がシルバー人材就職支援 柔軟な制度の導入が課題解決のカギ
2017.09.25
《本記事のポイント》
- 高齢者に向けて、首都圏の自治体が就職支援を始めている
- シルバー人材の活用は待機児童問題の解決にもつながる?
- 保育士の配置基準があるが資格取得は難関
人生の幕を閉じる、その瞬間まで元気でいたい――。生涯現役を願う高齢者は多いだろう。
そんな高齢者に向けて、首都圏の自治体が就職支援を始めている。東京都文京区では「介護施設お助け隊」と称して、10月から5つの介護施設で、60歳以上の雇用を始める。人件費は区が補助するため、施設側の負担はゼロだが、将来的に高齢者の直接雇用につなげる考えだという。
記事には、東京都大田区が、介護施設のほか保育所に対しても高齢者の就職支援を始めることや、埼玉県が「シルバー・ワークステーション」を立ち上げ、シルバー人材センターの会員をオフィスや、介護施設、保育所、スーパーなどに派遣する取り組みなども紹介されている。
待機児童問題の解決にもつながる?
定年を過ぎても生涯現役で、元気に活躍する高齢者を増やすために、シルバー人材の活用は積極的に進めるべきだ。
一方で、現在保育事業において待機児童問題が大きな課題となっている。原因はさまざまにあるが、保育士が不足していることも大きい。ここに大きく貢献できる可能性があるのが、子育て経験豊富なシルバー人材だ。
ある都内小規模認可保育所の園長は、本欄取材に対し、「以前勤務していた園では、シルバー人材の派遣があった」と語る。体力等を考慮して、外遊びの多い日中より、夕方や朝の時間帯の勤務や、教室の掃除、テーブル準備などをお願いしていたそうだ。
「何か事故があった時に責任を取るのは、専門的に勉強して知識と資格のある保育士。しかし、資格とは関係なく、子供の動き、考え、どこに危険があるかを知っていて、複数の子供を見ることができる優秀な人もいる」(同園長)
こうした優秀な人材は、シルバー人材だけでなく若い世代にもいる。しかし、保育士資格を取るための国家試験に合格できず、保育士をあきらめるケースもあるのが現状だ。
保育士の配置基準があるが資格取得は難関
現在、保育園の開設のためには、0歳児3人につき保育士1人、1~2歳児6人につき保育士1人、というように、子供の数に対して必要な数の保育士を揃えなければならないという、保育士の配置基準がある。
保育園を増やすには保育士も増やさなければならないが、資格が取れないために辞めていく人もいる。これは、あまりにももったいない。
前出の園長によれば、2年ほど保育園で経験を積めば、資格がなくても十分戦力になるという。ならば、正規の保育士資格に加え、準保育士資格制度を設けてはどうか。子供の健康や危機管理上必要な知識と、2年間の現場経験や園長推薦があれば、随時、準保育士として認める制度だ。
配置基準を準保育士も想定したものにすれば、実力もやる気もあるのに、筆記試験がネックとなって保育士をあきらめるケースは減るし、人手不足解消にも貢献するだろう。
シルバー人材の積極的な活用と、資格制度の見直しが保育士不足解消のカギとなりそうだ。
(HS政経塾 須藤有紀)
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2017年7月8日付本欄記事 「都議選で争点にすべきだった『待機児童』問題を、こう考えてみる」
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2017年6月20日付本欄記事 「ニーズに応える保育園サービスへ――しらかし貴子【都議選・もっと身近な東京問題】」
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