都心の相続税は「お家お取りつぶし」税制――なべ島ひさし氏【都議選・もっと身近な東京問題】
2017.06.13
筆者プロフィール
なべ島 ひさし(なべしま・ひさし)1964年東京都生まれ。御成門中学校、芝商業高等学校を卒業。大原簿記学校の税理士科を経て、現在、駐車場業などを経営。
筆者は、港区生まれ、港区育ち。しかし、40~50人いた小学校の同級生のほとんどが、区外に引っ越さざるを得なくなった。もう片手で数えるほどの人数しか残っていない。
それはなぜか。地価が高い港区では、「親が亡くなると、相続税を払うために、家を追い払われてしまう」のだ。
筆者の父も3年前に亡くなり、現在、相続税の調査中だ。払えるかどうかギリギリのところで、正直苦労している。まさに「三代相続したら、財産が全て没収される」という現実がある。
「家」のみならず「家庭」が潰れる!?
この相続税は、家族の絆を断ち切る効果を持っている。
親が子供に財産を遺せないとなると、子供は「それなら親の面倒を見なくていい」と思ってしまうこともある。そうして、子供に放っておかれた親の面倒を見るのは、政府になる。社会保障費はますます膨らみ、さらに増税が進むという悪循環だ。
自宅のみならず、家庭も壊しかねない、まさに「お家お取りつぶし」税制と言える。
個人のお店も「お取りつぶし」
さらに、個人で事業をしている人も、子供に店を引き継ぐことが非常に難しい。
筆者も、事業で使う土地を、「もう個人で持っていたらもたない」ということで、法人の所有に切り替えたことがある。手続きがあまりにも煩雑で、他の仕事ができなくなった。
さらに、次の相続でいかにしたら事業継承できるかなど、悩みは尽きない。
そんな時間とエネルギーを使うのであれば、「どうすればお客様にもっと喜んで頂けるか」を考えるほうが、よほど生産的なはずだ。
東京都のみならず、日本全国でこういうことが行われていると考えると、経済にとっても大きなロスになっているはずだ。
住み続けたい人に「地価」なんて関係ない
筆者が、地元の挨拶回りをしている時にも、「住み慣れた家に住み続けたい」という悲痛な声をよく聞く。そのささやかな願いを壊すのが、過度な税制だ。
先日お会いしたおばあちゃんも、土地の時価が高いために、多額の固定資産税を払わされ、生活費がままならない。これでは生活できないので、貯金を削らざるを得ない。「将来が不安で不安でしょうがない」と話していた。
また、以前、新橋に住んでいた方が、相続税の関係で、西麻布に引っ越した。しかし今度は、「西麻布にも住めなくなるかも」と言われていた。
税金を計算する時に、時価が高いと、多くの「資産」があるとみなされる。しかし、その家に昔から住んでいて、売るつもりもない人には、本来、関係のない話だ。制度上、勝手に「裕福だ」と判定され、「裕福なら税金を多く払え」と言われ、その手持ちのお金がないと、家を追い払われる。実情に合わない税制と言わざるを得ない。
地価が高い場所には「相続税の減税特区」も!?
特に地価の高い場所には、「相続税の減税特区」を創設する必要があるのではないか。せめて、「親や兄弟が亡くなっても、長年住み慣れた家を追い払われるようなことがない」という制度を実現すべきだ。
地域を回っていると、「私は政治に関心がない。今はどんなことをやっても変わらないよ」とおっしゃる方は少なくない。しかしそこで、「いつまでも住み続けられる港区をおつくりします」と言うと、ふっと表情がやわらぐ。これは、自宅を持たれたり、個人で商売をしている方、全ての悩みと言える。
多くの方は、「相続税を払って、家がなくなるのも当たり前」という風に思っている。しかし、「それは当たり前ではない」「変えられる」ということを、訴えていきたい。
都議選は「劇場」から「日常」へ
「東京都議選」が、生活から遠い。
小池百合子・東京都知事が掲げる豊洲問題も、都議会改革も、「旧勢力を吊るし上げて注目を集めているだけ」という指摘も多い。
しかし、都議会という「劇場」から、都民の「日常」に目を転じれば、東京にはいち早く解決しなければならない課題が、山積している。
【関連サイト】
幸福実現党東京都議選 特設ページ
https://hr-party.jp/senkyo/2017togisen/
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