トランプはレーガンの再来か? レーガンの実績に垣間見えるトランプの戦略
2016.11.17
「Make America Great Again(アメリカを再び偉大な国に)」を選挙スローガンに、今回のアメリカ大統領選に勝利したドナルド・トランプ氏。
トランプ氏の衝撃的な勝利を、1981年に登場したロナルド・レーガン大統領と重ねる人も多い。何かと共通点の多い両政治家。トランプ新大統領の今後を占うためにも、レーガン氏の実績と比べてみたい。
元々は「泡沫候補」だったレーガン氏
元ハリウッド俳優のレーガン氏は、人気はあったが、出馬当初は、まさか本当に大統領になるとは誰も思っていなかった。しかし、外交で失敗続きだった当時のカーター大統領に不満を募らせた国民は、「何か新しいこと」を期待し、民主党のカーター氏と真逆の政策を訴えた共和党のレーガン氏を大統領に選んだ。
これは、政治家経験ナシのビジネスマンであるトランプ氏が選挙に勝利した、今回の大統領選の構図に似ている。
「小さな政府」を目指す経済政策
レーガン氏は、減税・規制撤廃、福祉予算の抑制などを通して、「小さな政府」を目指す経済政策を提唱した。
トランプ大統領の経済政策も、大幅な減税(特に法人税の最高税率を現行の35%から15%へ引き下げ)、各種規制緩和、そしてオバマケアの撤廃による福祉予算の抑制などが含まれている。目指す方向性はかなり似ているので、トランプ氏は「レーガンの再来」としばしば言われている。
レーガノミクスは、結果として財政赤字と貿易赤字の「双子の赤字」を生んだが、減税による需要拡大と軍事支出の拡大によってアメリカ経済を不況から脱出させた。減税によって好景気に転回させ、逆に政府の税収増につながった。
「強いアメリカ」を復活させる
レーガンはこの経済政策で増やした歳入を軍事支出に転換し、「強いアメリカ」を復活させるビジョンを描いた。ソ連との軍事競争に乗り出し、ソ連を経済破綻に至らしめ、冷戦を終わらせたという功績がある。
トランプ氏も、「強いアメリカ」の条件である軍備の拡張を進める可能性が高い。国防関連情報サイト「ディフェンス・ニュース」に掲載された、トランプ政権移行チームの副責任者のインタビューでは、「トランプ政権は軍備増強に動く」と断言されている。具体的には、米軍の48万人体制を54万人に増強し、かつ現在の海軍272隻体制を350隻体制に、18万人の海兵隊員を20万人にそれぞれ増強するプランを描いているという。
軍備増強は、「イスラム国」、中国、北朝鮮などに対してトランプ氏が危機感を抱いていることの表れかもしれない。「アメリカ・ファースト」とは言っているが、世界に対して責任を果たしていこうという気概が感じられる。
トランプはレーガンを超える?
このように、両政治家は(1)政治家経験がなかったが、既存の政治家と真逆の政策で勝利を勝ち取った点、(2)減税や規制緩和などで「小さな政府」を目指す経済政策、(3)「強いアメリカ」を復活させるための軍備増強、という3つの共通点がある。
しかもトランプ氏は、自著で1兆ドル(約110兆円)という巨額のインフラ投資を主張しており、こうした景気刺激策によって、レーガノミクスを超えるインパクトが生まれると期待する見方もある。
トランプ氏がアメリカ経済を立て直し、アメリカが「世界の警察」として世界の平和に貢献する国になることを期待したい。
(小林真由美)
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