澤穂希引退「悔いのない最高のサッカー人生だった」 リーダーは言葉ではなく背中で語る
2015.12.19
「人生最大の決断となりましたが、悔いのない最高のサッカー人生でした」
日本女子サッカー界のレジェンド、澤穂希選手が今季限りでユニフォームを脱ぐ。この突然の発表に、スポーツ界のみならず、芸能界などからも、引退を惜しむ声が次々と届いている。
代表出場試合数205試合、得点数83得点。どちらも、日本女子サッカー史上、最多記録だ。澤選手は15歳から、20年以上にわたり、「なでしこジャパン」の中心選手として日の丸を背負い続けた。
なでしこジャパンの世界一に貢献
キャリアのハイライトは、2011年に行われた、ドイツ・ワールドカップ決勝の日本対アメリカ戦だろう。
アメリカに2対1とリードされて迎えた延長後半12分。試合時間も残りわずかの中、澤選手は、味方選手のコーナーキックに右足アウトサイドで合わせ、劇的な同点ゴールを決めた。その後、日本はPK戦までもつれた激闘を制し、史上初のワールドカップ王者に輝く。澤選手自身も大会得点王となり、MVPに選出された。2011年のサッカー年間最優秀選手賞(バロンドール)も受賞している。
また、ワールドカップで優勝した2011年は、東日本大震災が日本を襲った年だった。地震や津波で大切な家族や友人を失い、日本全体に暗雲が垂れこむ中、なでしこジャパンの活躍は人々の心に希望と勇気を与えた。
スポンサー撤退が相次ぐ女子リーグと勝てない代表
澤選手はサッカー選手として、これ以上にない輝かしいキャリアを築いてきた。
澤選手がキャリアをスタートさせた当時、日本女子サッカーリーグ(JLSL)も、1994年に名称を「L・リーグ」に変更した。各国の代表クラスの選手がプレーするなど、女子サッカー熱は高まりを見せていた。
一方、代表チームの方はいまいち振るわない。1991年、ワールドカップに初出場し、1995年にはベスト8入りするものの、その後3大会連続で予選敗退。2011年に優勝するまで、アメリカやドイツなど、世界の強豪らの後塵を拝し続けていた。
そうした影響もあり、L・リーグの観客は激減し、スポンサーの撤退が相次ぐなど、L・リーグはリーグ存亡の危機に陥った。澤選手自身も1999年、大学を中退し、アメリカに新天地を求めることになった。
その後、L・リーグは大学やアマチュアの参入があり、チームの経費を考慮して、全国方式から東西にブロックを分けるなど運営形式を変え、リーグを何とか維持する。その間、代表チームは徐々に実力をつけていく。
転機となったのは、2008年に北京オリンピックだ。なでしこジャパンは4位に入賞し、国際大会で初のメダルを手にした。その後、テレビやマスコミで取り上げられ、女子サッカーに対する人気も回復し、ワールドカップやオリンピックでの好成績につながっていた。
「苦しいときは私の背中を見なさい」
澤選手のサッカー人生は、こうした日本の女子サッカー界の歩みとともにある。今代表で活躍している選手たちも、澤選手にあこがれを抱いた人が多い。
彼女の活躍、貢献の裏には何があったのか。
澤選手が特に優れている点は、技術はもちろんのことだが、それ以上にリーダー、プロとしての意識の高さだろう。
澤選手は自著で「リーダーは、みんなと同じじゃだめで、やっぱりみんなとは違うというところを見せないといけません。でも、そのためには、まず自分が人の何倍もの努力もしないといけない」と語っている。
実際、北京オリンピックの際には、チームメイトに「苦しいときは私の背中を見なさい」と言葉を投げかけたという。言葉以上に背中で語ることで、チームをけん引してきたのだ。
与えられた環境に悲観せず、忍耐や努力を積み上げる。そうすることで、いつの間にか、プロフェッショナルの道を歩んでいることは多い。澤選手が切り開いてきた道は、後輩たちに確実に続いている。2014年にコスタリカで行われた、U-17女子ワールドカップで「リトルなでしこ」が優勝するなど、今後の女子サッカーの更なる飛躍に期待せずにはいられない。
現在開催中の皇后杯が、澤選手の現役最後の大会となる。その雄姿を是非とも目に焼き付けたいものだ。(冨野勝寛)
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幸福の科学出版 『サッカー日本代表エース 本田圭佑 守護霊インタビュー』大川隆法著
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