女子サッカーの日本代表「なでしこジャパン」が、W杯初優勝という金字塔を打ち立てた。今まで一度も勝ったことのない最強のアメリカを相手に、労を惜しまない勤勉なサッカーで2度リードを許しながら2度とも追いつき、最後のPK戦は気持ちで圧倒した。

今大会注目されたのが、佐々木則夫監督の選手たちのモチベーションの高め方だ。

PK戦の直前には、「2度も追いついてPKなんて儲けものだろ。楽しんで来い」と選手たちに言葉をかけたという。笑顔で送り出された日本選手たちは、こわばった表情のアメリカ選手と好対照だった。

準々決勝の開催国ドイツ戦の前には、選手たちに東日本大震災の被災地のスライドを見せた。そのとき佐々木監督は「本当に苦しいときは、被災地の人を思って踏ん張れ」と語ったという。スライドの最後に「自分たちに今、できることは何だろう」とテロップが現れると、選手たちは号泣したという。

アメリカとの決勝戦の前には、女子代表チームが編成されたばかりの80年代の先輩たちの映像を見せた。選手たちは「女子サッカーの歴史を築いてきた人たちがいて、今の自分たちがあるんだ」と感謝の気持ちが自然に湧き上がったという。

男子日本代表でW杯前に「自分のためにプレーする」と語った選手がいたが、佐々木監督が選手たちに求めたのは、自分よりも、「日本の被災者のため」「先輩たちのため」にプレーするということだった。

大会MVPで得点王の沢穂希選手が決勝前に語った言葉にすべてが表れている。「自分たちは今、好きなサッカーをやらせてもらっていることを感謝している。たくさんの方に応援していただいているので、自分たちが勝つことで、多くの人たちに元気やパワーを与えられたらうれしい」

気持ちの面も含めて、なでしこジャパンは真のチャンピオンだ。(織)