法政大学名誉教授で、市民自治の思想などで知られる政治学者の松下圭一氏が6日、心不全のため逝去した。

松下氏の著作は菅直人氏の"バイブル"となった

松下氏は、戦後の安保反対闘争の理論的支柱だった東京大学名誉教授の故・丸山眞男の元ゼミ生。国家による統治から市民自治や分権政治への転換を提唱し、後世の政治家に大きな影響を与えた人物だ。松下氏の著作は民主党の政治家にも大きな影響を与えている。菅直人元首相は、首相に就任した2010年の所信表明演説で、「松下氏は自分の政治理念の原点」と語ったほどであり、“バイブル"のようにしている。

松下氏に心より哀悼の意を表したい。ただ、現代の政治において松下氏の思想を展開しているのが、沖縄の辺野古で基地移設反対運動を繰り広げたり、経済省前のテントで脱原発を主張したりしている人たちである。

反対者の気持ちを反映するのは、政治活動の一部として重要なことだ。ただ、米軍基地の移設は国防に、原発再稼働はエネルギー政策に関わる。国家レベルの判断が必要な時に、政治家が個々人の意見ばかりを拾いすぎると、国の方向性を定めるという統治の機能が失われてしまう。国益を守るには、有効な手を打てる有識者の判断や政治家の大局観が必要だ。

政治学の役割は支配者と被支配者のピラミッドの正当性を説明すること

民主主義や共産党による一党独裁など、政治の形態は様々だが、時代を問わずどの国にも、指導者と民衆というヒエラルキーは存在する。その支配者と被支配者のピラミッドの正統性を説明するのが、政治学の役割だ。その点を踏まえると、松下氏の政治思想は、日本という大きな規模の国家を統治するには不足があったと言わざるを得ない。松下氏の理論を乗り越え、新時代の政治学をつくっていくことが、同氏に対する最大の弔いとなるのではないだろうか。(冨)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『父が息子に語る「政治学入門」』 大川隆法著

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幸福の科学出版 『篠原一東大名誉教授 「市民の政治学」その後』 大川隆法著

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幸福の科学出版 『スピリチュアル政治学要論』 大川隆法著

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幸福の科学出版 『日米安保クライシス』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=90

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