米議会で、下院の共和党議員たちが、2016年度の予算案を公開したことを、欧米各紙が報じている。
予算案の焦点となるのは、大きく分けて「社会福祉」と「国防」の優先順位だ。
例えば、2014年度予算では、社会保障(24%)と医療保険(24%)などの社会福祉予算が、全体予算の半分ほどを占めており、国防は17%だった。米政府の財政赤字が問題視されているなかで、オバマ氏の民主党は社会福祉を充実させて、国防予算を削ろうとしている。
共和党は従来から社会福祉の削減と国防の強化を党是としており、今回公開された3.8兆ドルの予算案も例外ではない。国防を強化すると同時に、社会福祉を削減することによって国が抱える負債を削減しようということだ。共和党の予算案によると、主に社会福祉の削減によって次の10年で5.5兆ドルの負債を払い下げる。
米政府は、今後10年で負債を1兆ドル削減することを法律で義務付けられており、これが国家予算のあらゆる方面を圧迫している。国防費も例外ではない。
しかし、軍の海外運営費用は削減の対象とならないので、共和党はその予算を劇的に増加することで、強制削減に対抗しようとしている。ただ、これが合法であるかどうかは、未だに議会で審議中だ。
米タイム誌によると、クリーブランド市で演説を行った際、米オバマ大統領は、「この予算案はすでに裕福な者たちのために、さらなる『富への道』を開くだけだ」とし、共和党が「金持ちの味方」であることを強調した。オバマ氏は、相変わらず「富裕層が儲ければ中間層・貧困層が苦しむ」という、「ゼロサム」思考で経済を考えている。
また、国内の貧困や人種差別に執心するあまり、国防費の削減が、世界にどれほどの混乱と不安を広げているかも見えていないようだ。
共和党は昨年11月の中間選挙の結果、上・下院で過半数政党となった。社会福祉を削減し、国防を強化することで、自助努力で発展し、強いアメリカを取り戻そうとしている。
アメリカは、国の繁栄や富は創造することで増やすことができ、決してゼロサムではないことを、再認識しなければならない。それと同時に、世界に対する責任を取り戻し、新たに台頭してくる全体主義国家や専制国家を抑止する役割を果たす必要がある。
今回の予算案は上院がこれから作成する予算案と刷り合わせた後に、大統領の机に向かうが、オバマ氏は、この予算案に対して拒否権を使用すると思われる。国家予算に見られるアメリカの未来のための戦いは、まだまだ続きそうだ。(中)
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