1957年に日本の自衛隊と米軍が行った、核使用を想定した共同図上演習「フジ」の概要について、18日付の東京新聞が報じた。同記事では、共同通信社と黒崎輝(あきら)・福島大准教授が米国立公文書館で発見した文書をもとにして、内密に核シェアリングを進めようとした自衛隊制服組(武官)を批判している。
核シェアリングとは、米国が管理する核兵器を同盟国に置き、有事の際に、米国の許可の下に同盟国と共に使う仕組みのこと。現在もドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、トルコには計180発の米軍の核兵器がある。
記事によれば、当時の自衛隊幹部と米軍との間で、核シェアリングについての対話がなされ、日本側は、米軍に「自衛隊に核兵器を貸与するか」「日本の核武装を支援するか」などを問い、米軍側は「核兵器に関する支援の提供は日本の要望と能力次第」「米国は日本が自衛隊に適切な核兵器を導入することを望む」などと答え、最終的にNATOと同じ核シェアリングを進めたいとの意向だったという。
しかしその後、50年代後半の反核世論の高まりや安保闘争もあって、結局、政治的に断念せざるをえなかった。
記事では、「国民に伏せたまま制服組が核共有を構想した戦後史の裏面が明るみに出た」と、核シェアリングが"悪事"であるかのような書き方をしているが、当時は、ソ連がアメリカに先んじてスプートニク人工衛星を打ち上げ、「ミサイル開発でソ連が優勢なのではないか」という論争(ミサイル・ギャップ論争)がなされた時代だ。日米の防衛関係者が、危機の時代に日本を守ろうと努力していたと見るべきではないか。
当時の岸信介首相は核兵器の保有は可能と答弁したものの、その後の67年には佐藤栄作首相が非核三原則を打ち出し、日本は強大化するソ連の核戦力から目をそらし続けた。幸運にもソ連が崩壊し、当時のような核攻撃の脅威は去ったが、21世紀の今、中国が次の核大国として台頭している。中国は、アメリカを狙う長距離弾道ミサイルをすでに完成させ、潜水艦からそれを撃つこともできる。
幸運は二度続くとは限らない。日本は、米軍との「核シェアリング」を再検討すべきではないか。(遠)
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