全国各地から、ご当地のレトルトカレーを集め、本棚のように収納している。写真は、東京スカイツリーソラマチ店。

智慧の法

智慧の法
心のダイヤモンドを輝かせよ

大川隆法著

幸福の科学出版

2015年2月号記事

『智慧の法』特集

売れる!
プロフェッショナルの智慧

営業・接客販売マーケティング

part3 マーケティング


contents


デフレ時代に質で勝負

新たな成功モデルを開いた脱スーパー

カレー500種類、ドレッシング170種類、それ以外にも醤油や乳製品など、圧倒的な品揃え。

その一方で、スーパーで主力とされる生鮮食品を置かないのは、関西発の北野エースだ。

同社は、「脱スーパー」と評され、注目を集めている。

そのマーケティングの秘密に迫った。

インタビュー

エース専務取締役

統括経営本部長

髙橋一実

(たかはし・かずみ)

1965年、大阪府生まれ。大阪商業大学卒業後、エースに入社。首都圏事業部部長や常務取締役などを経て、現職。

すべての商品に説明を書き。その横に、スポッターを貼る工夫も見られる。(※)店舗によって価格は異なる。

1964年、兵庫県伊丹市で創業したエースは当初、ディスカウントストアを経営。高度経済成長と相まって、順調に店舗数を増やしていった。

しかし、バブル崩壊による長期不況に突入した90年代、大手スーパーが主導した安売り競争を受け、同社の経営状況は悪化。

当時を知る髙橋一実・専務取締役は、「はっきり言えば、スーパーの負け組でした」と振り返る。経営方針の見直しを迫られた同社は、とにかく大手がやらない「ニッチ戦略」に舵を切った。

「例えば、スーパーで売られている野菜や惣菜などの生鮮食品は、回転が速く、利益率も高い。その一方で、賞味期限は長いものの、回転が遅いレトルト食品などがあります。後者に目をつけた 我々は、売れ筋を集める大手スーパーとは真逆の、バラエティ色が出せる品揃えの豊富さで勝負しました。 つまり、得意な事業に経営資源を投入した『選択と集中』です」(髙橋氏)

こうした発想で生まれたのが、現在の「北野エース」だ。しかし、その後も赤字が続き、経営は苦しかった。

「デフレの時代に、あえて品質で勝負したので、経営危機に陥り、資産もたくさん売りました。ですが、デフレは続くと読み、後に引くつもりはありませんでした。商品の価格は、高級店よりも安く、スーパーよりは高いというニッチを狙い、店舗も、富裕層が多い首都圏に出店させるなど、新しい店づくりを目指したのです。もちろん、試行錯誤の連続でした」

実際、グループ内では、20以上の店舗が閉店になる、痛みを伴う改革だった。その結果、独特の店づくりを実現して次第に顧客の心をつかみ、今では70店舗にまで拡大させた。

顧客を楽しませる店づくり

一般的にスーパーと言えば、必要なモノを毎日買う場所で、消費者のニーズは安さにあると考えられている。そのため、大手スーパーは、売れ筋商品に絞り込み、効率を求める。

髙橋氏は、この〝常識〟に疑問を感じたという。

「毎日、スーパーに行っても、必要なモノを買うだけでは、面白くありません。これに注目し、『買い物客を楽しませよう』と考えたのです。具体的には、500種類のカレー、150種類の醤油、90種類の味噌など、商品の選択肢に深みをつくりました」

単に選択肢を増やしたのではなく、特定のジャンルを決め、その商品の魅力を掘り下げたわけだ。さらに買い物客を楽しませようと、店内には様々な工夫が見られる。

例えば、まるで本のように、品物を陳列(写真①)。商品数を多くしたために、すべての商品の値札に、その商品の説明を付け加えた(同②)。これらの工夫で、店内の雰囲気を褒めてくれるお客様が増えたという。

実際、北野エースでの買い物客の滞在時間は、平均的なスーパーよりも長く、1時間も過ごす人までいるというから驚きだ。

「各店舗では、お客様の感覚を刺激する〝五感訴求〟を実践させています。『売れないものを並べているのに、なぜ増収増益なのか』と聞かれることもあります。まさに価値観の違いです。とは言え、このニッチ戦略が、答えとして正解だと分かっていても、楽な道のりではありませんでした」