米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)の慰安婦問題に関する一方的な記事を、12月5日付の本欄< http://the-liberty.com/article.php?item_id=8864 >で紹介したが、このほどワシントン・ポスト紙にも、評論家のリチャード・コーヘン氏が日本の戦争犯罪について言及した記事が掲載された。

内容はNYT記事のように一方的なものだが、本記事はさらに追及の範囲を広げ、慰安婦だけではなく、靖国参拝問題、731部隊、アンジェリーナ・ジョリーの新作映画「アンブローケン」のテーマでもあるアメリカ人捕虜の虐待なども取り上げている。日本が慰安婦問題や南京問題の否定を続ければ、国際的な信用を失う可能性があるとまで主張した。

NYT同様、従軍慰安婦問題に関して、コーヘン氏は一次資料による証拠を全く提示せず、「慰安婦の歴史的事実を虚偽とする運動がある。しかし、多くの目撃者と被害者が慰安婦問題は事実であったと言っている」としている。

コーヘン氏も、一国全体に罪を着せ、その国民性を貶めるような論調を、「慰安婦たちが被害にあったと言っているから真実に違いない」と、鵜呑みにするのだろうか。

また、捕虜の虐待をもとに日本を批判するのは、あまりに偏った歴史観ではないだろうか。1970年代に出版されたチャールズ・リンドバーグの戦争録や、他の米兵士の日記を見てみると、アメリカも日本を批判できる立場にはないのだ。

当時のアメリカ兵の回顧録や日記を見ると、捕虜となった日本兵を並ばせて機関銃で撃ち殺したり、戦死した日本兵の骨をみやげとして本国に送り返すなどの蛮行が見られる。1943年に、米陸軍参謀総長マーシャル大将が太平洋司令官マッカーサー大将に対して、「米兵による蛮行に関する報告書に懸念を感じる」と打電したほどだ。

もっとも、捕虜になった日本兵は運が良い方だと言える。米軍は降伏しようとする兵を殺しすぎて、情報を得るための捕虜がおらず、上層部が苦悩するほどだったという。また、降伏を受け入れず、ジャングルの中をさまよわせ、餓死させるなどということもしている(もちろん降伏するために近づいてきた者は射殺された)。

同記事は安倍首相の靖国参拝に対しても、「戦争犯罪者が祭られた神社だ」として、その訪問に対して否定的だ。しかし、東京大空襲を実行したカーティス・ラメイや、原爆を落としたポール・ティベット、イラク戦争やベトナム戦争などで戦争犯罪を行った者たちが永眠しているアーリントン墓地に、アメリカの大統領が訪問することについて、コーヘン氏はどう思うのだろうか。

戦時に国防長官を務めていたロバート・マクナマラ氏は、「ラメイは、『もし我々が負けていたら、戦争犯罪者として断罪されていただろう』と言った。彼は正しい。我々は確かに戦争犯罪者と呼ばれるようなことをした」と後に発言している。ラメイは、負けた場合、自らの行為が「悪」と断罪されることを知っていたのだ。

戦争の歴史は、「勝者が善で、敗者が悪」というように勝敗によって善悪を決められることが多く、第二次大戦も例外ではない。ラメイのように、当時に戦っていた者たちのほうが客観的に真実を見ている場合もある。

戦後の東京裁判や、欧米の認識は、「勝者の歴史観」という側面が強い。来年は戦後70年だが、これを機に日本は、勝敗ではなく、普遍的な価値観をもとに事実を再検証し、自国の歴史を取り戻す必要がある。(中)

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