閣僚の相次ぐ不祥事で、安倍内閣の支持率は急落している。だが、この種の足の引っ張り合いには、何か釈然としないものを感じる。
第2次安倍改造内閣の目玉だった女性閣僚のうち、小渕優子経済産業相が「おカネ」、松島みどり法相が「うちわ」がらみで20日に相次いで辞任した。
23日には、後任の宮沢洋一経産相も、地元の秘書が、政治活動費を広島市内のSMバーに支出していたことが発覚。翌24日には、御法川信英(みのりかわ・のぶひで)・副財務相が、有権者にカレンダーを無料配布していたことが分かり、松島氏と同じく公職選挙法違反の疑いがあると指摘されている。
ルールはルールとして、「不祥事」が発覚した人々は、政治家としての脇の甘さを反省すべきだろう。しかし、あまり細かい問題で政治家の足元をすくうことが、本当にその国や国民を幸せにするか、という疑問がある。
例えば、今回の松島氏の「うちわ」問題を厳しく追及した民主党の蓮舫氏自身も、過去に「うちわ型ちらし」を配っていた。それには、「骨」がないため、法的にはうちわではないそうだが、有権者にとってはどちらも同じ。にもかかわらず、「骨」の有無の違いだけで、徹底的に人を批判し、かたや辞任を余儀なくされたわけだ。
そもそも、「公職選挙法」や「政治資金規正法」の趣旨は、票の買収や資金力の差による不公平を防ぐことなどにある。ここから考えれば、「うちわ」問題は、非常に些細な問題であり、法律が「政争の具」として利用されているようにしか見えない。国民の政治不信とは、こういうところから始まるのではないか。
本当に「政治とカネ」を問題にするなら、もっと深刻な問題がある。各政党は、選挙で票を得るために、国民への「バラマキ政策」を競い合う。だが、その中には、税金を使った「票の買収」と言えるものも多く潜んでいるはずだ。
例えば、民主党が政権を奪取する際に掲げた「子ども手当て」などはあやしいが、国民から自助努力の精神を奪い、経済成長や税収増に結びつかない単なる出費で、国の借金を増やすことは、長い目で見て、国民を不幸にする。また、消費増税分の財源が充てられる社会保障においても、年金が「ネズミ講」と化し、事実上破綻している(関連記事参照)。
こうしたことは規模が大きすぎて問題として認識されにくいが、国民の幸福や未来の発展を損なう、壮大な「買収」「詐欺」と言ってもいいだろう。
「うちわ」問題のような些末なことを解決してもらうために、国民は国会議員に血税を払っているわけではない。もし国会議員が、小学校の学級会レベルの論争で満足しているならば、それこそ「カネ」の無駄だ。その陰にもっと大きく深刻な「政治とカネ」の問題が潜んでいる現実に、有権者は気づかなければいけない。(光)
【関連記事】
2013年12月号記事 「税と社会保障の一体改革」という幻想 (Webバージョン) - 編集長コラム
http://the-liberty.com/article.php?item_id=6890
2012年6月号記事 国民は「年金ネズミ講」の被害者だ- ナチス戦犯並みに官僚・政治家の責任追及を!
http://the-liberty.com/article.php?item_id=4193
2014年10月21日付本欄 女性閣僚のダブル辞任は数合わせの弊害か? 「女性が輝く社会」には正しい女性観が必要