香港がイギリスから中国に返還されて17年。中国政府が思想・言論統制を進める中、多くの市民が反発を強めている。そんな中、香港の民主化運動を批判する駐英中国大使と、運動に賛意を示すイギリス人の元香港総督らが、英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙上で論争している。

論争の中心になっているのは、香港で民主化を求める団体の一つ「Occupy Central」に対する見解だ。この団体は、2017年に予定されている、香港トップの行政長官を選ぶ普通選挙について、北京政府が立候補基準として「中国を愛すること」、つまり、北京政府に忠誠を誓う必要があるとしていることに抗議している。場合によっては、香港の金融街を占拠する行動に出るとも表明している。

この動きについて、劉暁明・駐英中国大使は9日付FT紙に寄稿。「Occupy Central」は「香港経済に混乱をもたらす」と批判し、選挙制度について改革を求める声には、「選挙制度に国際標準などない」と切り捨てた。また、一国二制度の下では、「司法権は主権のある中国に属す。香港の政治改革は、(中国政府が解釈権を持つ)香港基本法に従うべきである」と、強圧的な主張を展開している。

この主張と歩調を合わせるように、世界の大企業を顧客に持つアーンスト&ヤング(本部:ロンドン)などの四大会計事務所(Big 4)は、「Occupy Central」の運動について、「取引や商活動を混乱させる」と意見広告を出して批判。劉大使も寄稿の中で、Big4のスタンスを支持するという形で、中国の香港支配を正当化している。

これに対し、10日付FT紙上では、香港返還前の最後の香港総督だったクリストファー・パッテン氏が、「香港の司法は中国政府のいかなる圧力からも独立しているべき」と、中国政府の姿勢を批判。また、以前、香港行政機関に勤務していたイギリス人のアリスター・ラング氏も11日付同紙に寄稿し、「このままでは、治安維持のため香港に人民解放軍を送られる危険がある」と警告している。

一連の論争からは、経済的な利益を盾に、中国政府が本格的に「香港支配」を進めようとしている緊迫感が伝わってくる。しかし、香港の自由が奪われれば、中国政府の支配は台湾などのアジア地域にも及ぶだろう。前出のラング氏は、「中国は金の卵を産むガチョウ(一大金融センターである香港)を全滅させかねない。台湾を併合しようという野心があるのは言うまでもないが」(11日付同紙)と指摘する。もちろん、日本の沖縄も危ない。

今後、日本を含む各国は、経済面で中国にコントロールされないよう注意しながら、香港の民主化運動を後押しすべきだ。香港の民主主義を守ることは、台湾の民主主義を守ることにもつながる。今、目指すべきは、中国による香港・台湾支配ではなく、中国の香港化・台湾化である。各国が協力して、民主主義の波を中国本土へと波及させることが急務だ。(晴)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『大川隆法 フィリピン・香港 巡錫の軌跡』 大川隆法著

http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=27

幸福の科学出版 『孫文のスピリチュアル・メッセージ』 大川隆法著

http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=725

【関連記事】

2011年10月号記事 『香港での対話』未来への羅針盤 ワールド・ティーチャー・メッセージ

http://the-liberty.com/article.php?item_id=2701

2014年8月号記事 釈量子の志士奮迅 [第24回] スペシャル対談 In 香港 李柱銘

http://the-liberty.com/article.php?item_id=8016