ナイジェリアで200人以上の女子生徒が拉致される事件が起きた。事件の実行犯であるイスラム過激派の「ボコ・ハラム」の指導者であるアブバカル・シェカウは、このほど発表した声明の中で、「われわれの同胞を釈放しない限り、(女子生徒を)解放しない」と語り、ナイジェリア政府に拘束されているメンバーの釈放を求めている。
「ボコ・ハラム」とは、ナイジェリアの現地語で「西洋の教育は罪」を意味し、キリスト教を含む西洋文明や民主主義を否定するテロ組織だ。2002年、モハメド・ユスフが組織して以来、ナイジェリア国内の警察署やキリスト教会、税関などを次々に襲撃してきた。国際テロ集団「アルカイダ」ともつながりがあるとされ、ナイジェリア政府軍が掃討作戦の対象にしている。
多くのボコ・ハラムメンバーは、ナイジェリア南部の貧困層出身であり、西洋文化を受容した豊かな地域である北部を標的にするなど、テロ活発化の背景には、北部と南部の経済格差があるようだ。今回の事件も、北部にあるボルノ州で起きている。
しかし、経済発展の恩恵が十分に享受できないことを理由に、豊かな国が多い西洋文明を否定する行動こそが、イスラム過激派の問題と言える。近代資本主義の原理に適応しようとしないことが原因であり、この姿勢を改めない限り、彼らが豊かになることはないだろう。
さらに、今回の事件が象徴するのは、多くの少女が標的になったことだ。イスラム社会では、女性を財産の一つと見なすなど、女性の権利が尊重されていないことが、国際社会から問題視されている。イスラム教に基づく国家建設を要求する「ボコ・ハラム」だが、こうした行動は、イスラム社会が近代化できていないことを印象づけている。
実際、「ボコ・ハラム」の設立者であるユスフは、高等教育を受けていたにもかかわらず、「地球は平らである」と信じるなど、中世のような価値観で凝り固まっていた人物だ。
豊かな社会を実現するためにも、本来は寛容的な宗教であるはずのイスラム教は、前近代的な慣習を捨て、人権や経済原理などの近代的な価値観に心を開いていくべきだ。(慧)
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