「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)5月12、19日合併号(4月28日発売)に掲載された人気漫画「美味しんぼ」(原作:雁屋哲)が、福島原発事故の風評被害を煽っていると批判を受けている。

問題のシーンでは、主人公の新聞記者が福島第一原発を取材するのだが、そこで原因不明の鼻血を出し、それに対し前福島県双葉町町長が、「福島県では同じ症状の人が大勢いますよ」と発言している。主人公を診察した医師が「福島の放射線汚染とこの鼻血を関連づける医学的知見はありません」と診断するシーンもあるものの、「風評被害を助長する内容ではないか」との批判が殺到する結果になった。

実は、「美味しんぼ」が偏りのある描写をしたのはこれが初めてではない。「戦時中に朝鮮人の強制連行があった」「日本人は韓国に酷いことをしたのにもかかわらず謝罪していない。歴代の首相は私人の立場で謝罪したに過ぎない」などの事実に反した描写をはじめ、戦時中にオーストラリアのシドニー湾に日本海軍の特殊潜航艇が侵入し米国の艦船に攻撃を加えたことについて「酷いことをした」など、軍隊が軍隊を攻撃したことをさも悪いことのように描写している。

雁屋氏は他にも、「マンガ日本人と天皇」「黒鍵(くろのキー)」など天皇を批判する作品の原作を書いている。極めて特定の思想に偏った内容だ。

また、東日本大震災直後の2011年3月12日に、雁屋氏は自身のブログにこんな投稿をしている。福島第一原発の冷却装置が停止したことに対し、「今政府は、半径10キロ以内の住民の避難を勧告しているが、10キロどころで収まる訳がない。福島原発の数10キロ四方の土地はこれから、数千年、数万年人が近寄れない土地になるだろう。周辺の魚も全部食べられなくなる」と科学的根拠もなく、極めて感情的に被害を予想している。原爆攻撃を受けた広島・長崎でさえ戦後復興しているのに、核燃料が直接放出されていない福島原発が「数万年も人の近寄れない土地」になるわけがない。

雁屋氏は今回の批判に対し、「取材に基づいており、風評被害を助長するような意図ではない」と述べているが、福島県に対する風評被害になることは明らかだ。「原発は危険」という印象を与える悪質な"洗脳"と言えるだろう。

「美味しんぼ」は既刊110巻、累計1億冊を突破した人気作品だ。読者に与える影響も大きい。震災から3年が経ち、東北全土が復興にあたっている時にこのような描写をすることは、あまりにも無責任だ。雁屋氏は福島県民に対して、自らの不明を詫びるべきだ。(悠)

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