英国の民間旅行会社ヴァージン・ギャラクティック社は、今年運行を始める宇宙船「スペース・シップ2」に中国人を乗せることができないと、英ニュースサイト「デイリーメール」が25日に報じた。

同社の販売している宇宙旅行では、米ニューメキシコ州にあるスペースポート・アメリカを出発して高度100キロメートルまで上昇し、宇宙空間を見ながら4分間の無重力体験ができる。一人当たりおよそ2500万円かかるが、すでに600人の予約が入るなど人気が出ている。

この宇宙船に中国国籍を持つ人が乗れないというのだ。理由は、冷戦時代にアメリカが制定した反スパイ法にある。アメリカの国際武器取引規制は、中国やイラン、北朝鮮の人々が兵器技術に関連する施設への立ち入りを禁じている。今回の「スペース・シップ2」のロケットエンジンが兵器技術に当たるため、同法律が適用されるという。ただ、中国国籍を持っていても、アメリカのグリーン・カードや、旧英国領である香港のパスポートを取得していれば問題なく乗れる。

この件に関し、中国版ツイッター上で「いつの時代だ」「この会社を買収しちゃえ」などと、同法律を時代遅れであるかのように主張するコメントも出ているが、アメリカが宇宙技術を兵器技術の一種と考えているという視点は、日本としては注目すべきだろう。

かつては、空から相手国の動きを観察するために宇宙ステーションに人が送り込まれたこともあったが、高精度カメラが開発されてからは人工衛星が代替した。日本にとって国防上重要なミサイル迎撃システムも、人工衛星が中心的な役割を果たしている。宇宙技術の開発は、軍事・国防に通じるものなのだ。

中国やインドなどが有人宇宙飛行に挑戦する中で、独自の有人宇宙飛行計画を持たない日本はこの分野で遅れを取っている。これはつまり、国防技術の遅れにつながってしまうものであり、宇宙開発計画の見直しが急務だ。宇宙技術を進歩させることは、国民の命を守ることにも直結すると言っても過言ではない。(居)

【関連記事】

2013年12月4日付本欄 着実に前進する中国の宇宙開発 日本も遅れを取るな

http://the-liberty.com/article.php?item_id=7030

2013年7月25日付本欄 防衛大綱の中間報告発表 日本を守りきる国防体制の強化を

http://the-liberty.com/article.php?item_id=6392