中国が2日、月探査衛星「嫦娥(じょうが)3号」の打ち上げに成功した。14日頃には月探査機「玉兎号」が中国初の月面着陸を試みる予定だ。月面着陸に成功すれば、中国はアメリカ・ロシアに続き、月に進出した3カ国目の「宇宙大国」となる。

この度の月探査衛星の発射は、10月末に天安門前で起きたウイグル人による車突入・炎上事故など中国国内での混乱を最小限におさめ、衛星の打ち上げを国威発揚に利用し、政権の求心力を高める狙いがあると見られる。そのためか、衛星の打ち上げが未明だったにもかかわらず国営中央テレビが生中継し、紙面では「嫦娥(月面探査衛星)が玉兎(月面探査機)を抱き、月に向かった」と大々的に報じられた。

中国は江沢民政権以降、わずか20年ほどの間に驚異的な速さで宇宙開発を進めている。

江沢民政権下の1999年には、「神舟1号」で無人宇宙飛行に成功。その後、2003年には「神舟5号」でロシア・アメリカに次いで世界3番目となる有人宇宙飛行に成功した。ただ、「神舟5号」発射に立ち会ったのは胡錦濤だったため、有人宇宙飛行は胡錦濤の“手柄"との見方もある。

その胡錦濤政権は、2011年に宇宙ステーション実験機「天宮1号」の打ち上げに成功し、同年に無人宇宙船「神舟8号」、その翌年には有人宇宙船「神舟9号」とのドッキングに成功した。

このほか、弾道ミサイルによる人工衛星破壊実験や中国版GPS「北斗」のための測位衛星の打ち上げにも成功している。

そして今回、習近平政権下で、中国の宇宙開発は新たに「月」を目指し始めた。「玉兎号」の月面着陸が成功すれば、中国は世界3位の「宇宙大国」という地位をさらに印象づけることになる。

こうして見ると、中国ではそれぞれの国家主席が、その任期中に宇宙開発のコマを着実に前進させてきたと言える。2020年に中国独自の宇宙ステーションの開設が予定されていることから、習近平政権ではさらに宇宙開発が加速する可能性も指摘できる。

中国の宇宙開発担当者は、あくまでも宇宙の平和利用を強調しているが、実際には月の資源開発はもとより、軍事目的で宇宙開発をしていることを忘れてはならない。大陸間弾道ミサイルの開発など宇宙技術の進歩は軍事技術に応用できるものだ。実際に中国の宇宙開発を担当しているのは国防部門であり、人民解放軍の施設でもある酒泉衛星発射センターから衛星が発射されている。

一方の日本は、小惑星「イトカワ」の微粒子を持ち帰ることに成功した「はやぶさ」や、国際宇宙ステーションの有人実験施設「きぼう」に象徴されるように、高い宇宙技術を持っているにもかかわらず、中国のような戦略性に乏しい。ましてや、安全保障目的で宇宙に進出することなど考えられていないのが現状だ。

中国が宇宙での影響力をも拡大しようとしている今、日本は宇宙開発でこれ以上遅れを取ってはならない。(飯)

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