特定秘密保護法が6日夜の参院本会議で可決、成立した。
これまで日本の情報保全態勢は国際的に「情報漏洩への意識が低い」と評価され、情報共有の妨げになってきた。中国が防空識別圏を設定して挑発を強めるなど、国防の危機にある今、同盟国や友好国と情報を共有して国を守っていくために、この法律は必要だ。
特定秘密保護法は、防衛や外交、テロ活動の情報など、漏えいすると国の安全保障が大きく損なわれる情報を特定秘密に指定し、公務員などが漏えいした場合に最高で懲役10年を科すもの。今までは窃盗罪よりも軽い刑罰しか科されず、情報を得た側への罰則はなかった。政府は「国家安全保障会議(日本版NSC)」の運用に実効性を持たせるため、この創設とセットで今国会での成立を目指してきた。
これに対し、一部マスコミは、「知る権利」が侵害されると主張して反対している。しかし、当のマスコミも国民の「知る権利」に奉仕しているとは言い難い。
例をあげれば、福島第一原発事故の際、放射能の恐怖や原発の危険性が連日報じられた。しかし、放射線被害で亡くなった人はひとりもいないという事実が、新聞やテレビで知らされることはほとんどない。政府による無理な避難指示により、医療設備の不足や慣れない生活のストレスで亡くなった人が、原発事故の被害者のように報じられ、世論は脱原発の方向に誘導された。
また、韓国が執拗に主張している慰安婦問題についても、某新聞では元慰安婦という人たちの証言のみを根拠に慰安婦の悲惨さを伝えるばかりで、日本の官憲が慰安婦を組織的に強制連行した証拠は一切見つかっていないことは、ほとんどまったく伝えていない。
さらには、日本は借金が1000兆円もあり、財政破綻寸前だと新聞やテレビで言われている。しかし、ギリシャの国債は外貨(ユーロ)だったために返済できずに財政破綻したが、日本の国債は自国で発行している円であるため、返済できなくなることはありえないという決定的な違いは、まったくと言っていいほど伝えられていない。
こうした偏った報道で、一方の意見を国民に"秘密"にしておいて、「知る権利」を盾に法案に反対するのはおかしな話だ。
しかも、原発報道のときと同様、恐怖を煽っていることも指摘しておきたい。6日付の朝日新聞では、「秘密保護法案 条文解説ここが問題」というコーナーで、「規制の鎖あなたにも」という見出しを立て、マンガを使ってあたかも多くの人がこの法律によって自由に発言することや話を聞くことを制限され、有罪になるかのような記事を掲載している。
しかし、特定秘密保護法で守ろうとしているのは、軍事的な作戦行動や警備情報など、国の安全保障に関する機密情報だ。実際の裁判では、「これを漏らしたらスパイ」と世論が認めるような案件でなければ有罪にはならない。
ご都合主義で「知る権利」を主張し、ありもしない恐怖で国民を脅すのは、いいかげんにやめてもらいたい。(紘)
【関連書籍】
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2013年11月30日付本欄 「保護法案」に反対する時代錯誤な東京新聞 「報道の自由」で中国スパイを守る?
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2013年10月18日付本欄 【そもそも解説】「特定秘密保護法」の成立は、「自分の国は自分で守る」国への一歩