沖縄の米軍普天間基地の移設の行方を左右する名護市長選(来年1月12日告示、19日投開票)を控え、現地は思わぬ混乱に陥っている。
自民党本部は、移設に反対している現職の稲嶺進氏への対抗馬を探してきたが、自民党沖縄県連は「県外移設」を主張。告示3カ月前になっても候補者を調整できずにいた。そこに、県議の末松文信(ぶんしん)氏が10月23日、立候補の意向を表明。移設容認派の支持が固まったかに見えた。
ところが、同月29日、かねてより辺野古移設を容認してきた前市長の島袋吉和氏が急遽、立候補を表明。容認派の票が割れ、反対派の現職を有利にしかねない状況が生まれている。島袋氏は、「移設をしっかりと推進し、名護市を含む北部地域の発展に寄与したい」と語るなど、移設容認を明確に打ち出さない末松氏の様子を見て出馬を決意したという。
確かに、末松氏は昨年6月の県議選に立候補した際に、「動向を見極めた上で総合的に判断したい」(10月24日付朝日新聞)と述べるなど態度を明確にせず、今回も県外移設を訴える自民県連との関係から移設容認を明言してこなかった人物だ。
もともと移設反対の意見が強い名護市にあって、容認派が分裂すれば勝ち目は薄い。自民党の石破茂幹事長や同県選出の自民党の国会議員も一本化の調整を働きかけたが、島袋氏は応じなかった。もし反対派が勝てば、仲井真弘多知事から移設先の海面埋め立て工事の承認を得ることが難しくなり、基地移設は暗礁に乗り上げる。安倍政権にとっては大きな痛手となる。
そもそも今回の混乱は、自民党が基地移設を積極的に打ち出さず、「地方分権」的に地元・沖縄の意思を尊重するかのような曖昧な態度を取り続けてきたツケが回った結果と言える。沖縄は国防の要衝であり、中国・北朝鮮の軍事的な脅威が迫っている今、米軍基地の県外移設は国防上のさらなる危機を招くことになる。国の未来を考えるならば正々堂々と議論し、国民を説得する努力をすべきだ。
危機の時代こそ、未来の繁栄のために進むべき方向を指し示し、断行するリーダーシップが政治家には求められる。沖縄の混乱は、中央政府のあいまいな態度が生み出したとも言える。安倍首相が本当に憲法改正まで目指すならば、今回の名護市長選を前に、「辺野古移設」の実現を積極的に訴え、国を守る姿勢を明確にすべきだ。(雅)
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