中国の都市部で2012年に行われた収入調査で、上位5%と下位5%の平均収入に242倍もの格差があったことが判明した。2010年の格差は82倍で、たった2年で格差が約3倍にも広がり、中国で急速に貧富の差が開いている現状が分かった。3日付各紙が報じた。

また、所得格差を表すものに、ジニ係数がある。これは0から1の間の数値で格差の広がりを表わし、1 に近づくほど格差が大きく、0.4を超えると暴動などの社会騒乱が起きる警戒ラインとされている。中国では、このジニ係数が2010年に0.61となり、警戒ラインをはるかに超えてしまっていた。

こうした格差拡大の大きな要因は、「国進民退」という言葉で表現されるように、国は富むが民は貧しいままに置かれているという状況だ。2008年のリーマンショック以来、中国政府が、国営企業の経営を強化する流れが強くなっており、国営企業は5.3%程度の低い利子で資金を借りられる一方、民間企業は10%も取られるなど、待遇に大きな差がある。また、国営企業で働く人々の平均収入は民間企業の1.6倍程度で、その上、家や車ももらえるという。

当然、安定した就職先として国営企業の人気は高い。だが、国営企業の中には、共産党幹部にコネがなければ入れないところもあり、就職するには「共産党員」になることが有利で、親は子供に入党を勧めるという。そもそも、中国で「国」「国家」と言えば、「中国共産党」と同義であり、経済成長の恩恵を受けている人の多くが、党員や党の関係者である。市場経済を導入したとはいうものの、「チャンスの平等」があるとは言い難い。

一人ひとりの努力や創意工夫の結果、収入の差が生まれるのは当然だ。しかし、始めから機会が平等でなければ、人々は努力する気がおきず、不満はたまる一方だ。こうした中国の格差拡大は、一党独裁体制が生む大きな歪みであり、こうした部分を解消しないかぎり、中国の「先進国入り」は、まだまだ遠いものと言える。(居)

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