アメリカ・ホワイトハウスの嘆願受付サイト「We the People」に、なぜか中国国内の問題である「(北京の)清華大の事件について調べてほしい」という訴えが書き込まれ、署名を集めている。同サイトはアメリカ国民向けのものだが、書き込みや署名に国籍の制限はない。10日付東京新聞などが報じている。

「清華大の事件」とは、18年前、清華大学の女子学生が猛毒のタリウムを何者かに摂取させられ、視力や言語能力に重い障害を負ったというもの。最大の容疑者はルームメイトの女性だったが、証拠不十分として釈放された。このルームメイトは元政府高官の娘で、今はアメリカに移住している。

この事件の再捜査の嘆願が出たきっかけは、よく似た毒殺事件が今年4月に北京・復旦大学で起きたことだ。「復旦大事件」をきっかけに「清華大事件」も捜査してほしいとの声が中国国内のインターネットに書き込まれたが、当局に次々と削除された。その後、アメリカ在住の中国人が、「清華大事件を調査してほしい」と「We the People」に書き込んだのだ。

この嘆願は3日に書きこまれ、11日現在、すでに14万件を超える署名を集めており、その中には中国国内からと見られる署名も多くある。書き込みから30日以内に署名が10万件集まるとアメリカの政府機関が何かしら回答することになっているが、どのような回答が出るか、注目される。

中国ではメディアの検閲が厳しい上、デモなどで平和的に訴えても警察に制圧されてしまう。そのため人々は、中国当局に直接訴えても仕方がないと、インターネットの中で声を上げるようになった。今年初めに香港の週刊紙「南方週末」の社説が書き換えられた事件も、ウェイボ(微博)という中国版ツイッターで初めて事の次第が明らかにされた。

今回は、そのネット空間でも、政府が自分にとって都合の悪い投稿を削除するため、中国国民の訴える場所がアメリカなど海外に移ってきたということなのだろう。海外のサイトには中国政府も簡単には手を出せない。これから、中国政府にとって都合の悪い情報が海外サイト上で公開されていき、それが中国変革のきっかけになるのかもしれない。(居)

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