中国は昨年、ハワイ沖やグアム沖の米国の排他的経済水域(EEZ)内やインド洋で初めて情報収集活動を行った。ロックリア米太平洋軍司令官が9日の上院軍事委員会公聴会で明らかにした。
情報収集活動で使用された艦船・航空機についての言及はなかったが、同司令官は中国海軍が太平洋からインド洋の広範囲の海域で潜水艦を増強させていることを指摘し、「米海軍の潜水艦を除けば、明らかに中国がこの海域で最も強大な潜水艦能力だ」と明言した。
中国による情報収集活動とは、潜水艦を太平洋に本格配備するための海洋調査の可能性が高い。これは、日本近海での中国海軍の活動を見れば明らかだ。
2000年に中国海軍の情報収集艦が日本列島を一周し、その後も日本側の太平洋海域で調査を実施、2001年にも数隻の海洋調査船により詳細な調査を実施した。2004年~2006年にかけては、これより南の海域で同じような調査を実施した。調査は、海面・海中・海底を徹底的に行ったことから、潜水艦を展開するためのものと推定されている。実際に2008年には戦闘艦艇が日本列島を一周し、現在では西太平洋海域で軍事演習を行うまでになっている。
すでにインド洋では、中国の潜水艦が巡回している。7日付インド紙ヒンドゥスタン・タイムズによると、インド洋海域で巡回活動中の中国の攻撃型潜水艦とみられる船舶の交信が、昨年少なくとも22回記録された。中国の習近平国家主席は最近、インドを訪問し友好を強調していたが、一方で対インドの軍事力を増強させていることが改めて明らかになった。
さらに、中国の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)が太平洋に配備される可能性もある。米議会の「米中経済安全保障最高委員会」は昨年11月、米本土を射程に収める潜水艦搭載の核ミサイルを中国が2年以内に配備する可能性を指摘した。
SLBMは潜水艦に搭載される、海中からの発射型の弾道ミサイルだ。海中に潜水していればどこに潜水艦がいるか分からないため、攻撃されにくい利点がある。これが太平洋に配備されると、米海軍の艦艇は中国の潜水艦を警戒せざるをえないため、十分アメリカへの脅威になり得る。また、原子力潜水艦は半永久的に潜水することができるため、脅威は一層増す。ちなみに原子力潜水艦には、攻撃型原潜と弾道ミサイル原潜の2種類あり、中国は両方とも保有している。
中国の最大の狙いは「大中華帝国」を再興することであり、そのためには、東アジアから米軍を追い出す必要がある。その一環として、中国は太平洋に進出しようとしているのだ。
米国はオバマ政権で国防費を削減し、国内政策に重点を置こうとしているが、このままの路線が続けば、アメリカから中国に覇権が移り、中国が「大中華帝国」を再興する可能性もあり得る。対中融和政策を続けているオバマ大統領のアメリカは、早急にこの現実と向き合うべきだろう。(飯)
【参考記事】
2012年11月10日付本欄 「中国は2年以内に核ミサイルを潜水艦に搭載」と米議会報告書 強化される米への攻撃力