北朝鮮の原子力総局は2日、2007年の6カ国協議の合意に基づいて停止されていた寧辺の原子炉を、再稼働すると表明した。アメリカなどは2003年から、北朝鮮との6カ国協議で譲歩を引き出し、朝鮮半島の非核化を実現しようと試みてきた。再稼働が実現すれば、対話路線の破綻を象徴する出来事になる。

北朝鮮は恫喝を含む瀬戸際戦略によって、アメリカを交渉のテーブルに着かせ、経済援助や、国交正常化による「体制の保証」を引き出したい狙いがあると言われる。しかし、そうした短期的な駆け引きの一方で、北朝鮮が米本土をも脅かす核ミサイルの実用化に近づいていることを見逃してはならない。

北朝鮮が核でアメリカを狙うようになれば、日本や韓国を守っているアメリカの「核の傘」の信用が揺らぐ。アメリカにとっては、北朝鮮解体を成し遂げるための「時間切れ」が迫っていると認識すべきだろう。

すでに北朝鮮の核開発は、東アジアの核軍拡競争を生みつつある。北朝鮮による核実験後の世論調査では、韓国人の6割が自国の核保有に賛成しており、実際に与党セヌリ党内からは核武装論も聞かれる。また韓国政府は原子力協定を結んでいるアメリカに、ウラン濃縮と核燃料の再処理を認めるよう交渉中だ。韓国側はあくまで平和利用を主張しているが、これらの技術は核兵器の製造に不可欠のものだ。

アメリカは今のところ、核搭載できるステルス戦闘機「B-2」を軍事演習に投入するなど、北朝鮮に毅然と対抗する姿勢を打ち出して、韓国を安心させようとしている。だが事実上の核保有国となった北朝鮮を放置すれば、韓国はいずれ真剣に核兵器を持とうとするだろう。核不拡散を外交政策の柱の一つに据えてきたアメリカにとって、これはジレンマだ。北朝鮮の核開発を放置しておきながら韓国に核保有を許さないとなれば、同盟の危機につながりかねない。一方、逆に韓国に核保有を許せば、核不拡散という外交の柱を捨てねばならない上、日本や台湾なども核保有に動く可能性がある。

この問題を解くには、なるべく早急に北朝鮮の体制を崩壊させることが最善の策ということになる。北朝鮮をこのまま放置すれば、核軍拡競争のドミノによって東アジアがますます不安定化することは目に見えている。残り時間は少ないが、アメリカは自らの堪忍袋の緒を“断ち切って"、北朝鮮解体に向けた取り組みを進めるべきである。日本も、半島有事の際の対応の手足を縛る憲法9条などの制約を取り除くとともに、北朝鮮解放を目指すようアメリカに働きかける必要がある。

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