大手銀行の貸出しが順調に増えている。
4月1日付日本経済新聞によると、大手銀行の国内貸出残高は、3カ月連続で前年同月を上回り、198兆円となった。
同紙の分析では、企業のM&A(合併・買収)が盛んになり、その資金が必要となったことと、アベノミクスの影響で円安になって輸入代金の必要額が増していることにあるという。
今後、この流れが一時的なものにとどまるか、あるいは本格的な景気回復につながるかは、企業が設備投資をするために銀行からの借り入れを増やす流れができるかどうかにかかっている。
金融緩和政策のキモは、巷間言われるような円高対策やデフレ対策の側面もあるが、最も重要なのは、資金繰りに苦しんでいる企業にお金が行きわたるかどうかにある。
金融緩和によって円高が円安になり、デフレがインフレになっても、円安やインフレにはデメリットもある。現に、食品など輸入関連の価格は値上がりしており、生活に打撃を与えつつある。
そもそも為替や物価はどちらに振れても、メリット、デメリットの双方が生じるものだ。そうした中で、金融を緩和しなければならない理由は、経済の血液であるマネーを市場の隅々まで循環させるところにある。
おりしも、4月からは金融円滑化法が期限切れとなり、中小企業への資金繰り支援は打ち切られる。5万とも10万とも言われる中小企業が倒産するという声も出ており、せっかく順調に景気を上向かせつつあるアベノミクスに水をさすことになりかねない。
今後、新体制に入った日銀が、期待通りに強力な金融緩和を断行すれば、銀行も企業も前向きに投資できるようになる。
じわりと増加しはじめた銀行の貸出しの流れを止めてはならない。ただでさえ、朝鮮半島有事やキプロス発のユーロ危機が懸念される中、消費増税などの景気回復に深刻な影響を与えかねないネガティブな政策は避けておくべきだろう。(村)
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