かつて小説の中で、「遠い未来の出来事」として描かれた21世紀の現実を、私たちは今、体験している。45年前に出版された光瀬龍の『カナン5100年』には、北海道を舞台にした「オホーツク二〇一七年」という短編が収録されている。

21世紀の北海道には宇宙基地ができているが、日本人は底辺の生活を強いられていた。軍事的な衝突が九州で起き、「大きな戦争がはじまる」との噂が流れる、重苦しい2017年だ。日本国内には、アメリカ軍と中国軍が駐留し、「たがいに警戒しながらも協定して」、日本の宇宙空港を警備しているのだった。

米ソの冷戦時代に書かれた小説だが、21世紀の日本の運命を握る国は米中だと描写している点が鋭い。そして現時点で予測すると、この小説に描かれたような近未来が実際に来てしまう可能性もないわけではないところが恐ろしい。

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