昨年の大統領選で敗れた米共和党が、党再生に向けた険しい道のりを歩んでいる。
同党のランド・ポール上院議員は19日の演説で、中南米からの不法移民問題について、「アメリカで暮らし、働きたいと願うなら、その場所を見つけてあげよう」と述べ、移民法改革に前向きな姿勢を示した。アメリカでは推定1100万人とされる不法移民がおり、移民法の改革が急務になっている。
オバマ大統領は、一定の条件を満たした不法移民がアメリカの市民権を取れるようにする改革を考えているが、共和党側はこれまで、取り締まりの強化を基本スタンスにしてきた。
ポール氏は、草の根運動である茶会運動からの支持も厚い保守派で、2016年の次期大統領選に出馬する可能性もある。また共和党では、こちらも大統領選への出馬が噂されるキューバ系のマルコ・ルビオ上院議員が、不法移民に市民権取得の道を開く改革を策定している超党派議員グループに参加し、改革を訴えている。
茶会派のポール氏まで移民法改革に踏み込んだのは、共和党が改革を迫られていることの証左だろう。昨年の大統領選でヒスパニック、女性、若者の票を集められなかった共和党では、保守思想にこだわって教条的と見られている党のスタンスを軟化させようという動きが出ている。
共和党全国委員会が18日に発表した改革に向けたレポートには、党が有権者の意見に寄り添っていない(out of touch)ことへの反省が盛り込まれた。共和党は、アメリカを冷戦の勝利に導いた「レーガン大統領の党」を自負しているが、レポートには、そのイメージにとらわれていては支持が広がらないと、次のような反省の弁がつづられている。
「ロナルド・レーガンは共和党の英雄だが、初当選は33年も前だ。我が党は年配層にアピールする方法は知っているが、若年層については道に迷っている。我々の意見は若年層の感覚とずれていく一方のようだ」
実際に昨年の大統領選では、レーガン政権を支えた経済や外交のスタッフの面々が「昔の名前で出ています」とばかりにロムニー陣営に参加し、元大統領を意識した選挙戦を展開。しかしふたを開ければ、ヒスパニック票は約3割、30歳未満の票は4割弱しか獲得できず、党の弱点が露わになった。
反省の一方で共和党内では、移民法などの政策で柔軟なスタンスを取って支持を得ようとするよりも、従来の保守の姿勢を貫くべきだという意見も根強く、党再生は茨の道と言える。
次の大統領選がある2016年には、米中の覇権競争はさらに深まっており、オバマ大統領の福祉路線の下で財政問題も悪化していることが予想される。共和党は、唯物論国家・中国の覇権主義に打ち勝つとともに、米経済に力強い成長をもたらす、「次のレーガン」を見出す必要に迫られている。
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