進化論の父とされてきたのはダーウィンだが、実はもう一人の「父」としてアルフレッド・ウォーレス(1823~1913)がいる。ダーウィンより先に自然選択を理論化した論文を執筆した科学者だ。ウォーレス没後100周年にあたる今年、イギリス自然史博物館が「Wallace100」と題した記念イベントを開き、彼の業績を再評価しようという機運が高まっている。

このイベントではウォーレス関連の展示が行われるほか、定期的に講義やトークイベントを開催。また、インターネット上では、ウォーレスがやり取りした手紙の中で現存する4000通以上が全文公開されている。

同館の館長でウォーレスの専門家であるジョージ・ベッカローニ氏は「ウォーレスのめざましい業績は、現代では生前ほど正当に評価されておらず、ダーウィンの業績のせいで影が薄くなっている」として、開催中のイベントが「ウォーレスがダーウィンの影から自由になる」きっかけになると語っている。

ウォーレスは、南米や東南アジアで生物の採集や研究をするかたわら、進化論についての自説を手紙に書き、イギリスにいるダーウィンに送っていた。ダーウィンは1858年、ウォーレスから送られた論文を、ウォーレスに無断で「共著」として学会に発表した。翌年発表した『種の起源』が有名になったために進化論はダーウィンの手柄とされてしまった。

しかし、ダーウィンの進化論には不十分な点がある。サルが自然淘汰によって偶然進化し、人間になるというなら、進化の途上の「中間種」がいないのはなぜか。また、人間とサルでは、高度な精神能力や言語の習得能力などで大きな差があるが、自然選択によってこれほど高度な能力が生まれるとは説明がつかない。

これに対し、ウォーレスは心霊研究家でもあり、各地の降霊会に参加する中で霊魂の存在を認めていた。彼は、人間と動物の違いは宿っている魂の違いであり、進化には神などの創造者が介在すると理解していた。

ウォーレスの例から、神や魂の存在と科学理論とは十分両立することが分かる。生物学を突き詰めていくと、「生物の創造」という根源的な問いに行き当たる。その問いに答えるためには、生命の本質が霊魂であることを無視してはならないだろう。(晴)

【関連記事】

2012年6月号記事 ダーウィン進化論の終わり──神と宇宙から見た「種の起源」

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=4190

2012年12月10日付本欄 【海外メディア】ニューヨークタイムズが進化論をゴリ押し?

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=5265

【参考ページ】

Natural History Museum―Wallace100 (英語サイト)

http://www.nhm.ac.uk/nature-online/science-of-natural-history/wallace/index.html