環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の交渉参加について、安倍晋三首相が2月頃に予定されている日米首脳会談での参加表明を見送ることが分かり、今夏の参院選後に結論を先送りする可能性があることも明らかになったと、13日付産経新聞が報じている。
2月の時点で交渉参加を表明しない場合、日本がTPP交渉に主体的に参加するのは難しくなる可能性が高い。新たにTPP交渉に参加するには、すでに交渉参加している国の承認を得る必要があるが、アメリカの手続きは3カ月以上かかる取り決めになっているからだ。9月には最終妥結に向けた交渉が行われることになっており、タイムリミットは刻一刻と迫っている。
TPP参加には自民党内で反対が強いほか、連立与党の公明党も反対している。特に、日本の農林水産業をはじめあらゆる産業が深刻なダメージを受けるというのが理由だ。今回の参加表明先送りは、憲法改正に向けて、参院選に勝利して、与党で3分の2以上の議席を確保する必要があるからだと考えられる。
しかし、TPP参加によるメリットは決して小さくない。
まず、日本の農産物は海外での人気が高く、輸出拡大の可能性が十分にある。TPP参加によって日本の農業はダメージを受けるどころか、まだまだ強くなる余地がある。また、輸入が拡大したとしても、消費景気を起こす可能性もあれば、輸出国側の経済成長を助けることにもなる。貿易とは互恵的なものだから、どちらが得でどちらが損かという議論はやや不毛なところがある。さらに、TPPには知的財産権の保護や人権重視、環境保護などの概念が入っていることから、「中国外し」の意味もある。TPPは、周辺国に軍事的脅威を与えつつある中国に対する包囲網でもあるのだ。
TPPに関する議論は、デメリットばかりに議論が集中しがちである。しかし、考え方によっては、国際社会における日本の発言力を強めるチャンスでもある。政府・自民党は意見をまとめ、長期的な国益についても考慮した上で、早期にTPP交渉参加を表明すべきである。(晴)
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2013年1月5日付本欄 日本のTPP参加を警戒する中国がサイバー攻撃か
http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=5424
2013年1月号記事 幸福実現党の防衛力&GDP倍増プラン