静岡県浜松市で今年6月、中学2年の男子生徒(当時13歳) がマンションから転落死した事件について、浜松市教育委員会が設置した第三者調査委員会(以下、三者委)が19日、「自殺と判断する」「背景にはいじめがあったと言わざるを得ない」と結論を出した。

学校や教育委員会のいじめ隠しが横行する中では、第三者の目を入れなければその実態の把握すら難しい。今回の三者委は、弁護士、元家裁調査官の大学教授、臨床心理士、元警察官と教育関係者以外で構成されている。隠蔽体質に染まる教育界以外の視点から、いじめの実態が白日の下にさらされたこと自体は大きな前進だ。

しかし、この三者委による調査も、遺族による度重なる働きかけによって行われたものであり、教育現場の隠蔽体質そのものが変わったとは言いがたい。

学校側はこの死亡事件の原因について当初は「思い当たる節はない」と説明していた。しかし、遺族の要望で行われた調査の結果、男子生徒は同級生らから自転車を蹴られたり、首を絞めたり腹を殴られるなどの暴行、暴言を受けていたと分かった。にもかかわらず、学校側はいじめを認めた後も、「いじめと自殺の関係は不明」としていた。遺族が第三者による調査を希望したため、教育委員会が三者委を設置し、死亡原因の調査を委ねた。

三者委は8月以降、全校生徒対象の無記名アンケートや関係者への聞き取りを実施した結果、いじめを背景とした自殺であることが分かった。学校教員は生徒が殴られる場面を目撃していたにもかかわらず、教員間で情報を共有していなかったことも発覚している。

今後も、悪質ないじめに関しては、第三者の公平な視点からその善悪が判定されるべきだろう。ただし、自殺という最悪の結果に至る前に、いじめ自体を解決することこそが必要だ。学校側も、「いじめは犯罪」であり、自らの保身のために隠蔽して済まされるものではないことを自覚しなければ、いくら「いじめ防止」と言ったところで掛け声倒れに終わるだろう。(晴)

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