日本が環太平洋経済連携協定(TPP)に参加すれば、国内総生産(GDP)を約9.3兆円押し上げるという試算を、日米中韓豪など25カ国のアジア太平洋地域の産官学でつくるシンクタンク「太平洋経済協力会議(PECC)」がまとめた。12日付の日経新聞が紹介している。関税の撤廃に加えて、サービスや投資の自由化、貿易拡大による輸出企業の増加などの効果を想定しての試算だという。
試算によると、日本を含めた13カ国のTPPが実現すれば、世界全体のGDPを0.29%、2947億ドル押し上げる。GDPが増えれば、それだけその国の人々の所得も増えていく。貿易が活発化することによって、各国はより豊かになっていくのだ。
だが、9日に閉幕したロシア・ウラジオストクでのAPECにおいて、日本はTPP交渉への参加表明をしなかった。野田佳彦首相は、昨年11月にアメリカ・ハワイで行われたAPECでカナダ・メキシコとともに事前協議に参加すると表明したが、結局、野田首相は消費税増税法案を成立させることを優先して、TPP参加への国内議論を後回しにしたのである。
日本がTPP交渉に参加できる次のチャンスは、来春以降になる見込みだ。TPP交渉に参加するためには、加盟国参加国すべての同意が必要だが、アメリカ・オーストラリア・ニュージーランドからは、日本の参加に支持を得られていない。しかし、ニュージーランドのキー首相は、11日の会談で「日本がTPP交渉に参加することに期待している」と述べており、日本の参加への期待は大きい。
民主党は、TPP参加に伴う農林水産業への悪影響を懸念し、TPPに参加するならば農業対策の予算が必要だとしている。しかし、「TPP参加で農業が壊滅する」などということはない。品質の高い日本の農業は、国際競争力が強く、日本産のコメは、中国などの海外の富裕層に大人気だ。
今、日本は「安い賃金でモノを作り、輸出して稼ぐ」という、発展途上国型の経済成長から脱する時を迎えている。円高トレンドを背景にした世界一の購買力を生かし、発展途上国の生産物を買い上げ、他国の経済成長を助けるとともに、自らも高付加価値路線で豊かになることが日本の新たな生き筋である。
日本は、世界経済を成長させる大国としての力をすでに持っていることを自覚し、その責任を負うために一歩踏み出すべきである。(晴)
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