政府は7日、関西電力・四国電力・九州電力に要請していた節電数値目標を解除した。最も電力不足が心配されていた関西電力では、原発3基分に相当する、2010年夏比約11%の節電を達成。四国電力は8.3%、九州電力でも約10%の節電。いずれの管内でも計画停電は実施しなかった。

8日付東京新聞は、関西の市民の声として「暑い夏だったが、節電で不便な生活をしたという感じはない」、中小企業社長の声として「(工場の照明を発光ダイオードに変えたが、結果は)何もなかった。本当に電力は足りなかったのか」など、原発再稼働に対する不信の声を紹介。「原発はなくてもよかった」と結論付けようとしている。

しかし、本当に「なくてもよかった」のか。8日付フジサンケイビジネスアイでは、日本エネルギー経済研究所の小笠原潤一氏がこう語っている。「(電力)需給が安定して夏を乗り切ったのは、猛暑とならず、大きな火力発電所事故も起きず、節電も進んだから。何かの弾みで需給逼迫が起きる可能性は十分にあった。結果だけを見て大飯原発の再稼働が不要だったとの議論は的外れだ」

8日付朝日新聞は、夏に生産を減らす、自前の発電設備を整えるなど、関西の企業の努力を紹介している。企業は夏期の工場生産を止めたり減産するなどの他、照明をLEDに変える、工場の生産を関西圏外に移す、自家発電システムを取り入れるなどしている。計画停電が避けられたのは、かなりのコストを伴うこうした企業の節電努力や、各家庭の節電があってのことだ。

大阪商工会議所が150社に調査したところ、製造業の半数以上が、関西電力の供給エリア外へ「移転を検討」するとしている。脱原発派の主張に基づき大飯原発を再び停止してしまえば、関西地方の産業はさらに急速に空洞化するだろう。

来夏も、今年程度の暑さで済み、火力発電所の大規模な事故が起きず、民間の努力が同程度期待できるという保証はどこにもない。電力不足のリスクを直視しない脱原発運動は非常に危険だ。本欄で繰り返し主張しているように、安全性が確認できた原発は早急に再稼働するべきである。(晴)

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