23日付各紙は1面などで、原発に関するニュースを二つ載せている。一つは、政府が実施した「討論型世論調査(DP)」による、2030年の総発電量に占める原発比率に関する調査で、「0%」支持が46.7%を占めたこと。もう一つは野田佳彦首相が22日、首相官邸前で脱原発を訴え続ける市民団体「首都圏反原発連合」のメンバーらと面会した件だ。

前者に関し、朝日と東京は1面トップで、それぞれ「『原発0%』支持最多」「原発ゼロ 民意鮮明」と大きく伝えている。だが、ここで冷静に考えるべきは「民意は、どんな場合でも常に正しいか」ということだ。民主主義は国民による多数決原理が基本だが、それが正しく機能するためには、国民の「質」が非常に大事になる。普通の国民が判断の根拠とするのはマスメディアの伝える情報だ。その「情報の質」が悪ければ、それに基づく国民の判断も正しさを担保されない。

この点、弊誌が再三伝えているように、日本のマスメディアは福島原発の事故に伴う放射線について、次のような情報をほとんど伝えていない。

  • 年間100ミリシーベルト以下の放射線では、健康被害は報告されていない。
  • 福島の甲状腺被曝の線量はチェルノブイリの1000分の1である。
  • 7月に福島や宮城以外で測定されたストロンチウムは、1960年代の中国の核実験時の60分の1程度である。

これらを知らされず、逆に「放射能は怖い」と恐怖を煽る報道ばかりの中で生まれた「民意」は、正しいといえるだろうか。

後者のニュースで団体側は、大飯原発の再稼働を中止し、原発ゼロを目指すよう首相に訴えた。それに対し首相は、「基本的な方針は脱原発依存だ。中長期的に、原子力に依存する体制を変えていく」と、現時点での原発再稼働の必要性と意義を述べた。団体側からは反論が出、首相に食い下がるなどして、予定の20分が30分に延びた。

ニュース映像を見ても感じられるが、反原発側には「子孫が放射能汚染されたところで暮らすのは嫌だ」といった情緒的な反応が目立つ。反原発を唱える人々の判断が、メディアのアンフェアな情報操作によって煽られた怒りや恐怖で曇っていないかについては、冷静に見極める必要がある。(飯)

【関連記事】

2012年5月号記事 放射能これだけ知れば怖くない 第7回―放射線防護学の第一人者「高田純教授」

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=4012

2012年7月25日付本欄 福島事故は中国核実験での日本人被曝の60分の1

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=4643

2012年2月20日付本欄 「県民の99%が10msv未満の被曝」本誌は昨年6月の時点で報道

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=3833