韓国の李明博大統領が竹島に不法に上陸した事件は、日韓関係を急速に悪化させた。日本と韓国とのやり取りに注目が集まりがちだが、北朝鮮の動きにも目を向ける必要がある。日韓関係悪化の背後に、日米韓の関係を引き裂こうとする北の動きがある可能性があるからだ。

「北朝鮮が、東京、ワシントン、ソウルの間に亀裂をつくろうとしている可能性は排除できない」。16日のコリア・タイムズはこうした専門家の分析を紹介している。

実際に、最近の日韓関係は北朝鮮が有利になるように展開してきた感がある。6月には、北朝鮮情報を共有する日韓軍事協定の締結が、世論の反発を受けた韓国側のドタキャンで延期される騒動があった。北朝鮮側が「千秋に許しがたい逆賊行為」と呼び、猛烈な嫌悪感を示しているこの協定の延期に、北朝鮮は喜んだことだろう。

今回の竹島不法上陸事件については、北朝鮮は李明博政権の人気取りと批判している。しかしこの事件を報じた朝鮮中央通信は、いつもなら激烈な筆法で展開する大統領への個人批判は控えている。

北朝鮮はこのところ、強硬派の将軍を解任するとともに、一定の割合で農民が農作物を売買できようにする、実質上の計画経済放棄を打ち出した。また張成沢 ( チャン・ソンテク ) 国防委員会副委員長が中国を訪問して、経済特区での中朝共同開発について協議を行うなどしている。

4月のミサイル発射以降、核実験を行うか注目された北朝鮮は、近ごろ対外的に目立った動きを見せていない。一連の日韓関係悪化は、国内問題のために時間を稼ぎたい北朝鮮側が、韓国をけしかけて日本と争わせたという見方もできなくはない。

北朝鮮は日本に対しては、終戦前後に死亡した日本人の遺骨返還についての協議を持ちかけるなど、歩み寄りのポーズを示している。

ここのところ急激に反日色を強めた韓国政府だが、そのスタンスが誰を利するのかをよく考えるべきである。北朝鮮対策をはじめとする東アジアの安定には、日米韓の連携が必要だ。

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