中国におけるオバマ米大統領の支持率が大幅に低下している。
米ピュー・リサーチ・センターがこのほど発表した国際世論調査で、世界各国でのオバマ氏の支持率が明らかになった。それによると、ヨーロッパで80%の盤石な支持を集める一方、中国では2009年に62%だった支持率が、今年に入って38%にまで大幅に低下した。
7日付 CNN.com上で、ジャーナリストのザカリア氏は、調査結果の背景には米中間の地政学的な争いがあるとし、「魔法の杖をふるって、そのような対立を消すことは、不可能だった」と述べている。
オバマ政権は2009年の発足時前後、G2とも言われる米中協調を謳っていた。しかし、2010年ごろから「アジア太平洋重視」の外交政策に舵を切り、日韓豪など東アジアの友好国を巻き込んで、中国の軍事的な脅威に対抗する方針を打ち出した。
それをリードしてきたのは、ほかでもないクリントン米国務長官である。クリントン氏は今年7月に入って就任以来の訪問国が100カ国を超え、歴代国務長官で最多を記録。なかでも目立つのはアジア・中東・アフリカにおける動きであり、ミャンマーでのアウン・サン・スー・チー女史との会見に代表されるように、その動きはまさに「中国包囲網」である。
その意味で、中国でのオバマ氏の支持率が下がれば下がるほど、中国の脅威にさらされている国々の安全性は高まると言える。
だが一方、アメリカ国内を見ると、医療費の増大や財政危機などの影響で、向こう10年間に1兆ドル(約80兆円)の国防費削減が見込まれており、アジア太平洋地域に十分な海軍力を振り向けるだけの余力があるのか疑問視する声もある。加えて、一連の外交政策を主導してきたクリントン氏は、政権1期目が終わる来年1月で退任する予定で、オバマ政権は重要な外交の柱を失うことになる。
もし2期目のオバマ氏が、本気で世界の安定に寄与するような意義ある外交成果を上げようと望むのであれば、クリントン氏の敷いた「アジア太平洋重視」路線を引き継ぎ、中国の軍事的な脅威に本腰を入れて対処すべきである。
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