2030年の発電量に占める原子力の比率をめぐり、原発依存度をゼロにしても「経済にはむしろプラス」などとする野田政権に対して、経済界からの批判の声が上がっている。8日付の日経新聞が報じている。

枝野幸男・経済産業相は7日、発電における原発依存度をゼロにしても「経済的にはむしろプラスになる」「(原発ゼロで)再生可能エネルギーや省エネルギーの技術開発が進み内需拡大につながる」などと発言した。これに対し、経団連と日本商工会議所は原発ゼロを「非現実的」としている。その主な理由は、発電コストの増大だ。

日本総合研究所の試算によれば、現時点においても、燃料費の高騰を電気料金として回収するには、電気料金の3割程度の値上げが必要となる。さらに、2030年に原発ゼロを実現した場合、生産コストは企業全体で5.4兆円、うち製造業は2.5兆円上昇。企業の海外流出が避けられなくなり、結果、2030年のGDPは最大45兆円分押し下げられてしまうという。

野田政権は、海外に目を向けて原発の重要性を改めて見直すべきだ。アジア諸国では電力不足による大規模な停電や節電が相次いでいるが、その対策として叫ばれているのが原発の必要性である。

インドでは7月末に、送電設備や発電所の整備の遅れから大規模停電が起こり、国民の生活に多大な被害が出た。インド政府は、エネルギーの安定供給のため、2050年までに原発比率を25%に上げる計画だ。

韓国でも、猛暑に伴い電力需要が増大。韓国政府は6日、点検中の事故で2月から運転を止めていた釜山の古里(コリ)原発も再稼働することを決めた。

野田政権は、2030年の原発比率を決めるために、今月4日までに地方11都市で意見聴取会などを開催。参加した市民の7割が原発ゼロを支持したことなどが報じられている。だが、福島原発の事故以来、マスコミが原発への不安を煽り続けた中、弊誌のように、原発の必要性を主張する言論は封殺されてきた。

野田政権は、「民意」を聞いたというアリバイをつくって脱原発を掲げるつもりかもしれないが、それは単なる無責任以外の何ものでもない。米軍反対の声が大きいからと言って、沖縄から米軍を追い出しては日本が中国の脅威にさらされるのと同様、脱原発の声が大きいからといって、原子力発電を放棄してはいけない。

新しく有力な発電技術が確立されていない段階では、経済面や安全保障面などから見ても、日本に原発が必要であることは明白である。(晴)

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