先ごろアメリカの連邦最高裁が「合憲」の判断を下した医療保険改革(オバマケア)だが、社会保障をめぐる価値観の対立でアメリカは引き続き大きく揺れている。
米テキサス州のリック・ペリー知事はこのほど、同州が医療保険取引所設立やメディケイド(低所得者向け公的医療保険)拡大を行わない方針を明らかにした。
オバマケアと呼ばれる医療保険制度改革の中心は、医療保険介入の義務化、医療保険取引所の創設、メディケイドの対象拡大の3項目だ。医療保険取引所は州単位で設立され、ここで保険を購入することで民間の保険に加入するもの。ペリー知事の方針は3項目のうち2つを拒否することになる。
テキサス州では約620万人が医療保険に加入しておらず、人口に対する比率は24.6%と全米で最も高い。にもかかわらず、こうした方針が打ち出されるのは、独立心の旺盛なテキサスらしい気風のためなのだろう。
アメリカンヘルスライン・ドット・コムによると、この2つの項目に関しては、共和党が知事を出しているフロリダ州、サウスカロライナ州、ウィスコンシン州、ミシシッピ州、ルイジアナ州も受け入れを拒否しているとのこと。
これらの州の知事は、議会も共和党がコントロールできれば、医療保険制度改革を撤回できると考えている。
ペリー知事は声明で、「私は医療保険制度改革に加担し、自分の州を破綻させる企てには加わらない。それはわれわれの憲法や、政府の役割を限定するという基本的な原則に反する」と述べている。
アメリカでは、州に大きな自治権を持たせているのが特徴。医療制度改革に絡んで、このような声明が出されるのは、国家としての求心力が大きく揺さぶられていることを示している。価値観を二分する対立は、アメリカという国の今後のあり方を問うている。(寺)
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2012年4月号記事 オバマvs.ロムニー? いずれも米国の衰退は避けられない - 編集長コラム