日本の農業のあり方の変化を示す記事が、19日付日本経済新聞等に出ている。

富士通は農業クラウド「Akisai(秋彩)」を発表、10月から商用開始する。これは農業経営をサポートするクラウドサービスで、農業経営の効率化に意欲的な農業団体や農業法人、流通・外食大手などを主な顧客と想定して開発。農作物の栽培を管理し、生産向上、収穫量増加や品質向上を目指す(19日付日経、朝日)。

また、13日付読売オンラインによると、宮城県東松島市の青果卸売「石巻青果」は経済産業省の補助を受けて、生産現場と流通をITでつなぎ生産と出荷をコントロールする試みを始めた。これにより、生産性を6~7倍に高めることも可能になるという。

こうした農業へのIT技術導入の背景は、2009年の農地法改正だ。以前は企業の農業参入が制限されており、小規模な兼業農家が多かったためITの導入が進まなかった。しかし改正後は企業の農業参入が活発化し、IT活用の道が広がった。農業経営の高度化を見据えて、富士通以外にもNECやNTTドコモなどのIT各社も積極的に農業市場を開拓しているという。

外食産業ワタミの農業事業(農業生産法人 有限会社ワタミファーム)の営業損益は2013年3月にゼロ(前期は2000万円の赤字)となり、2002年の事業開始以来、初めて赤字が解消する見込みだ(19日付日経)。企業の農業参入の成功事例は少なく、ワタミも野菜の生産性の向上が難しく、長い間事業が採算ラインに乗らなかった。しかし収益率改善のため、不揃いの野菜を使い切るなど徹底的に無駄をなくし、規格外の野菜も柔軟に加工するため食材仕入れ部門との連携を強化し、事務部門を効率化するなど、地道な経営改善を重ね、徹底的に採算向上を目指した結果だという。

これらの記事は、日本の農業は規制緩和で参入自由度を増し、その自由競争の中で経営改善を重ねることで、もっと成長できることを示唆している。「自由」と「経営」が日本の農業活性化のキーワードだ。(飯)

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2010年8月号記事 人生の羅針盤「農業の未来をクリエイトする」

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=64