5日、福島第一原発事故の原因や背景を検証している国会事故調査委員会が、調査報告書を発表した。6日付新聞各紙は「自然災害」ではなく、十分な安全対策を行っていなかった政府や東電の「人災」であったと大きく取り上げている。
その「人災」の主体は誰か。報告書では、東電・政府・監督する規制当局の三者それぞれについて責任を問うている。しかし注目すべきは、菅前首相が「東電が全面撤退するのを阻止した」と主張しているのに対して、報告書が「現場も東電本店も全面撤退を決定しておらず、首相によって東電の全面撤退を阻止されたとは理解できない」としている点だ。
これを真正面から取り上げたのは産経だ。「事ここに至れば、いかに往生際の悪い菅直人前首相といえども潔く自らの非を認め、国民に謝罪するべきだろう」と断じている。読売も菅氏の責任に触れて「もっともな指摘である」としている。
他紙はそれぞれ、かなりトーンが違う。
■日経:官邸では保安院と東電に不信感が強まり、当時の菅首相が発電所に直接乗り込み指示する事態になった。その菅氏の判断も「指揮命令系統の混乱を拡大する事態になった」と非難している。
■朝日・毎日:「全面撤退」は官邸の誤解であるが、誤解を招いた最大の責任は東電の清水社長にあるとし、「混乱を招いた張本人」と厳しく糾弾している。
産経・読売は菅氏の責任を重く見ているのに対し、朝日・毎日はむしろ東電の責任が重いとしている。日経はその中間だ。
朝日、毎日、それに東京新聞などは、昨年9月、菅氏が東電の全面撤退を阻止し、首都圏壊滅を救った英雄であるかのように大きく報じていた。ここで手のひらを返して菅氏の責任だとするのはバツが悪いのだろうが、本欄ではすでにそれを見越していた(2011年9月14日付本欄)。
ともあれ、国会事故調が「首相の過ち」をはっきり指摘したことは大きい。マスコミも政府もこの報告をきちんと検証して、東電ばかりを悪者にしてきた姿勢を変え、政府による賠償責任を明確にすべきだろう。(晴)
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http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=4295
2011年9月14日付本欄 菅を「英雄」に仕立てようとするマスコミ