日韓の新聞各紙は、韓国政府関係者からの情報として、韓国が日本と軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を締結することを決めたと報じている。

北朝鮮の核兵器やミサイルの開発について、自衛隊と韓国軍は情報を共有するとともに、相手国から知りえた情報を第三国に公開しないというのが主な内容だ。李明博大統領の決裁を経て、早ければ29日にも両国の署名が完了する見通しだ。

軍事情報包括保護協定は、防衛協力について日本と韓国がはじめて結ぶ協定になる。同協定は5月にも締結の予定だったが、歴史問題を背景とした国民感情に配慮して、韓国側が見送っていた。一方で、4月の北朝鮮によるミサイル発射実験などが契機となり、韓国内でも国防への危機感が高まってきたことで、韓国は署名に動いたものと見られる。

とはいえ、反日世論を意識した恐る恐るの署名であることも否めない。韓国の外交通商部の説明も、「協定は情報を提供する義務を規定したわけではなく、ケース別に提供の必要性を綿密に検討する」と、どこか腰が引けた印象だ(韓国・総合ニュース)。

また、今回の締結の動きを紹介した韓国・中央日報(電子版)も、冒頭で「韓国と日本が北朝鮮情報を共有する"低いレベル″の軍事協力を始める」と、今回の協力が「低いレベル」であることをことさらに強調している。

北朝鮮の軍事的な挑発や横暴に対して、「西側」の日米韓が緊密に連携するべきであることは明らかだ。しかし、ナショナリズムに訴えて日本を叩けば支持率が伸びるという韓国の反日世論は、一番の国益である安全保障のための障壁ともなっている。こうしたナショナリズムと国益との板ばさみは、民主主義のジレンマとも言えるだろう。

日本ができることは、歴史問題が日韓関係の焦点になるのをなるべく避けるよう、北朝鮮対策で効果的なイニシアチブを発揮して、連携を深めていくことだろう。韓国の反日世論は歴史観と結びついた難しい問題だが、東アジアの平和のために、一歩一歩取り組んでゆく必要がある。(蝉)

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2012年6月号記事 東アジアの解放と大調和のために(前編)

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2012年4月13日付本欄 「北朝鮮」が争点にならなかった韓国総選挙

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=4118