再選挙で誕生したギリシャのサマラス政権は23日、緊縮財政の修正案を公表した。その内容は、一言で言えば、緊縮計画の大幅な後退だ。

■歳出削減を少なくとも2年間は延長する。

■失業保険の給付の期間を1年から2年に延長する。

■最低賃金の引き上げを撤廃する。

■所得税の最低課税収入は引き上げる。

■飲食店の付加価値税の減税。

反緊縮派にも配慮して、失業率が20%を超える国民の負担を和らげるのが狙いだ。

28から29日に開かれるEU(欧州連合)首脳会議で、修正を要請する予定となっているが、財政規律を重視するドイツなどの国の反発は必至と見られている。

24日付産経新聞では、編集委員の田村秀男氏がコラムで、こう述べている。

ドイツがユーロ発足後、年金の減額や失業保険制度の適用制限などに取り組んできており、身を削って緊縮財政を果たしてきたドイツ国民が納めた税金を、改革を怠ってきたギリシャやスペインの支援に回されるのは許しがたいと思うのは当然だ、と。

確かにドイツから見れば、ギリシャの緊縮財政の取り組みは、あまりにもぬるい。問題の先送りばかりで、到底受け入れられるものではないだろう。

しかし、現実問題として、原理主義的にあまりにも激しく緊縮すれば、恐慌の引き金を引く可能性もある。

結局、「緊縮財政をすれば、ギリシャ経済はさらなる不況を招くから、したくてもできない」が、「緊縮財政をしなければ、EUからの支援は得られず、ギリシャの財政は破綻するから、緊縮財政をせざるを得ない」という構図は、再選挙を経た今も、なんら変わっていないことになる。

再選挙自体が、問題の先送りだったのだ。

ギリシャをユーロから離脱させず、ギリシャ経済を浮上させる方法があるとすれば、むしろ積極財政だろう。EUによる融資ではなく、投資として、大型の公共事業を計画し、実行に移す。ギリシャ政府の借金は増えるが、失業者は救えるし、将来のリターンも期待できる。景気が浮上すれば、税収が上がって、借金を返せる見込みが生じる。その上で、歳出削減に入っていく。

しかし、これを実施するには、政治的な難易度が高すぎるだろう。結局、事態は、ユーロ離脱に静かに向かっているような気がしてならない。(村)

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2012年5月21日付本欄 【そもそも解説】ギリシャのユーロ離脱

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