景気の回復と外交でのリーダーシップの行方がかかる今秋の米大統領選挙は、アメリカにとって大きな分岐点となる。しかしその割に、有権者の期待感は乏しいようだ。

ウォールストリート・ジャーナル紙とNBCがまとめた最新の世論調査では、オバマ大統領が47%の支持を集めて、43%の共和党ロムニー前マサチューセッツ州知事をリードしている。しかし目立つのは、回答者の多数が「どちらの候補も変化を生まないか、よくない変化をもたらす」と答えている点である。接戦が予想される選挙戦だが、有権者はどちらかといえば冷めた目を向けているようだ。

確かに、今年の選挙戦は両陣営ともにアピールに欠けることは否めない。現職のオバマ氏は経済を再建できておらず、訴えるべき目立った論点がないから、ネガティブ・キャンペーンを張らざるを得ない。特にこの頃は、ロムニー氏の経営していた投資ファンドが失業者を生んだという趣旨のCMを展開しているように、富裕層への批判がオバマ氏の選挙戦のメイン・メッセージになっている。

対する挑戦者のロムニー氏は、オバマ氏の作った健康保険制度を盛んに批判しているが、そのモデル制度を作ったのは知事時代のロムニー氏であり、訴えられる実績は少ない。経営者としての経歴が強調されるが、知事時代の雇用政策は、21日付本欄が指摘したようにあまり成果を上げなかった。豊富な資金力をバックにしたネガティブ・キャンペーンで共和党内の公認争いを突破したロムニー氏は、本選挙でも同じ戦略に結局は頼らざるを得なくなるかもしれない。

議会予算局は減税の期限切れと歳出削減で、2013年にもアメリカ経済が再び不況に陥る恐れがあると指摘しており、経済再建は急務である。また外交では、財政問題のさなかに台頭する中国からの挑戦に対処しなければならない。

このようにアメリカは分岐点にあるが、前出の世論調査では、アメリカ人の半分近くがアメリカは長期的な衰退の入り口にあると答えている。人々を勇気づけるリーダーが待たれる中での、批判合戦のつまらない選挙戦は、アメリカの危機を皮肉にも象徴しているといえよう。

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2012年5月19日付本欄 【海外メディア】同性婚支持を表明したオバマ氏の「計算」

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