左派の社会党候補、フランソワ・オランド氏がフランス大統領選で当選した。「オランドが選ばれたというよりサルコジが追い出された」と評される消去法的なこの結果により、フランスは今後いかなる道を歩むのか。
現職サルコジ大統領との大きな違いは、サルコジ氏の財政緊縮重視策に対抗するかたちで、オランド氏が成長・雇用戦略の重要性を訴えていることだ。オランド氏はEUの新財政協定の再交渉以外にも、EU域内のインフラ整備事業の強化や、年金受給年齢の引き下げなどを打ち出している。また、今後5年間の任期中に、教育分野で6万人、警察関係で5千人を雇用し、若者向けの住宅も新規建設することを公約していた。
これらを見る限り、インフラ整備事業は別としても、具体的経済成長策というより、まずは歳出拡大による雇用の安定を目指す気配が強い。下手をすれば目先の利益を供与するバラマキに終わりかねない。現政権に対する不満から、有権者がとにかく政権交代を望み、バラマキ的な公約を掲げる野党を政権につけたとなれば、日本人としては、子ども手当や年金の充実を目玉に掲げた民主党が政権についた2009年の衆院選を思い出さずにいられない。その後の民主党政権は、子ども手当も年金制度も公約通りに実行しない(できない)ばかりか、絶対に上げないと言っていた消費税増税を進めようとしている。
8日付の米紙インターナショナル・ヘラルド・トリビューンは「オランドにとっての巨大な挑戦」と題する論説を載せ、「オランドの社会党政権は、赤字削減と経済成長を両立させ、社会的正義と、勢いづいた右派の要求(移民規制強化など)をバランスさせることができるのか? それが、オランドが直面している挑戦だ」としている。17年ぶりに選ばれた左派の大統領が、日本のような混迷の政治に陥ることなく「国民全員の大統領」(オランド氏の言葉)として成功できるのか、民主党政権との比較も含めて注目したい。(司)
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